2021 Fiscal Year Annual Research Report
ナノワイヤに基づく細胞外小胞の層別化法の創出と疾病診断への展開
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21H01960
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安井 隆雄 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00630584)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナノワイヤ / 細胞外小胞 / microRNA / 層別化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、これまでに開発してきたナノ空間制御による細胞外小胞の捕捉技術とmicroRNA解析技術を進展させ、細胞外小胞の直径・膜タンパク質に表面電荷を加えた層別化法の創出と、層別化する細胞外小胞に内包されるmicroRNAのpathway解析による細胞内機能の顕在化を行い、細胞外小胞の層別化情報とmicroRNAの細胞内機能情報を相関付けることを目的としている。細胞外小胞は、生物学的な生命現象において重要性が認知され、世界中で研究が推進されているが、これまでに報告されている研究手法では捕捉効率が低く、一部の細胞外小胞を層別化することに止まっていた。本研究では、独自の細胞外小胞の網羅的捕捉技術に、直径・膜タンパク質・表面電荷に基づく層別化技術を付与し、また、層別化する細胞外小胞に内包されるmicroRNAの機能情報を解析することで、これまで未踏であった “層別化細胞外小胞の学理に基づく疾病診断への展開” を世界に先駆けて実現する。本年度は、網羅的捕捉を達成した酸化亜鉛のナノワイヤの表面に様々な酸化物を成膜することにより、表面電荷による層別化を行った。細胞外小胞の表面電荷に基づく層別化は、網羅的捕捉を達成してきた酸化亜鉛ナノワイヤを基盤とし、表面に異なる酸化物を成膜することで酸化物の等電点に基づく分級である。各種酸化物は固有の等電点を持つことが知られており、その等電点の性質を利用し、SiO2やAl2O3、TiO2などの酸化物を原子層堆積装置により成膜した。また、ZnO/Al2O3などのコアシェル形状のナノワイヤをアニーリングにして、Zn-Al-O系などの混合酸化物ナノワイヤも作成し、様々な表面電荷を持つナノワイヤによる細胞外小胞の表面電荷による層別化を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、研究開始時に想定していた酸化物の種類(SiO2やTiO2、Al2O3、ZnO)に応じた層別化を達成することにとどまらず、酸化物の結晶構造による層別化を見出すことに成功した。酸化亜鉛ナノワイヤの結晶成長時にアンモニアを添加し、成長時間を制御することで、酸化亜鉛の結晶構造に影響を及ぼすことを明らかとした。XRDの評価より、アンモニアを添加し、成長時間を増加させることにより、ZnOナノワイヤの特徴的なwurtziteのピークだけでなく、zinc blendeのピークが現れることを見出した。また、高分解能の透過型電子顕微鏡像と電子回折像の結果より、アンモニア添加・6時間成長ではナノワイヤ結晶の根本が、アンモニア添加・9時間成長ではナノワイヤ結晶の先端にzinc blendeの結晶相が混在していることが明らかとなった。Heterogeneityを有する細胞外小胞においては、wurtziteへの吸着を好む細胞外小胞や、zinc blendeへの吸着を好む細胞外小胞が存在することを明らかとした。これらの研究成果より、当初の計画以上に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、網羅的捕捉を達成した酸化亜鉛のナノワイヤの表面に様々な酸化物を成膜することにより、表面電荷による層別化を行った。また、酸化亜鉛の結晶構造による層別化についても新たに見出すことに成功した。次年度以降は、ナノワイヤの直径の肥大化やナノワイヤ作製時の溶媒の界面力によるナノワイヤ間隔の制御により、細胞外小胞のサイズに基づく層別化を行う。ナノワイヤの直径の肥大化では、原子層堆積装置の成膜サイクル数を制御することで、表面の膜厚を原子層レベルで制御し、ナノワイヤ間隔の制御を行う。原子層堆積装置では、供給元素と酸素元素の交互導入と反応を繰り返すことで、原子1層レベルでの膜厚制御が可能である。その性質を利用し、各種酸化物の成膜厚を制御して、ナノワイヤの間隔を原子層スケールで制御する。本年度までの研究において、原子層堆積装置のサイクル数を変化させ、ZnO/SiO2のコアシェルナノワイヤの直径を変化させることに成功している。また、今回用いているナノワイヤはアスペクト比が大きいため、乾燥時の溶媒の界面力によってナノワイヤの形が変形することが確認されている。その形態上の性質を利用し、溶媒の界面力の大きさや乾燥時間によるナノワイヤ間隙の制御を行う。原子層堆積装置でナノワイヤの直径と表面の材料を制御し、その後、溶媒の界面力と乾燥時間によるナノワイヤの形の変形によって、ナノワイヤの間隙の制御を達成する。このナノワイヤを用い、ナノワイヤ間隔へ入り込むことが可能な細胞外小胞のサイズによる層別化を達成する。
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Research Products
(12 results)