2021 Fiscal Year Annual Research Report
環状ナフタレンジイミド-DNAによるカテナン構造を利用したDNAの固定化法開発
Project/Area Number |
21H01967
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 しのぶ 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80510677)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナフタレンジイミド / PCR産物 / 電気化学的検出 / カテナン |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスの流行によりその検査の重要性が増している。そこで、本研究ではPCR産物の迅速な検出のための新規なDNA補足チップの構築を目指す。DNAの固定化にはDNAの「呼吸(連続する数塩基の水素結合の開裂)」を利用し、基盤上の環状ナフタレンジイミド(cNDI)でDNA-cNDIによるカテナン構造を形成することで2本鎖DNAのみを補足する。cNDIと2本鎖DNAとの相互作用解析は等温滴定カロリメトリーによる物理化学測定やストップトフロー分光光度計による速度論解析を行う。DNA-cNDIによるカテナン構造の安定性、複合体挙動は学術的観点からも興味深い。ターゲットはコロナウイルスから増幅したPCR産物とする。本年度は、上記の目的のため、以下の検討を行った。 1) cNDI-gluとして、cDNI-Nme-gluとcNDI-pip-gluの2種類を合成した。cNDI-Nme-gluよりもピペラジンを持つcNDI-pip-gluのほうが、リンカー長が長くなっている。 2) cNDI-gluとdsDNAとの相互作用解析として、UV-Vis 吸光度測定を行った。cDNI-Nme-gluとcNDI-pip-gluともに、2本鎖DNAの添加に伴い、淡色効果が観察された。これより、2本鎖DNAにcDNI-Nme-gluとcNDI-pip-gluがともに相互作用していることが示唆された。UV-Vis 吸光度測定によるDNAの融解温度測定を行ったところ、2本鎖DNAの熱安定性を増大させることが分かった。cDNI-Nme-gluとcNDI-pip-gluでは、cNDI-pip-gluのほうが、2本鎖により結合することが明らかになった。 3) QCMと電気化学的手法で、cNDI-pip-gluの固定化方法について検討した。その結果、かなりのDNAが末端で電極表面に結合していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定とは前後して、電気化学的検出の条件検討に進み、固定化状況の推察まで進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
cNDI-pip-gluを用いて、より詳細な2本鎖DNAとの相互作用解析と、PCR産物の電気化学的検出を行う。また、コロナウイルス由来のモデRNAから逆転写、PCRしたときのPCR産物の検出を行いたい。 22年度は以下の研究を予定している。 算出する。図4のようにインターカレートモードで結合すると予想している。 1) 円偏光二色性スペクトル測定、Topoisomerase Iアッセイで2本鎖DNAへの結合モードを算出する。[Poly(dA-dT)]2と[Poly(dG-dC)]2や、PolyA・polyUなどDNAやRNA2本鎖に対する結合挙動解析を行う。 2) PCR産物の検出 PCR産物としては、国立感染症研究所 病原体検出マニュアル 2019-nCoVに従い、販売されているコロナウイルスのORF発現プラスミドからコロナウイルスのゲノムRNA由来の配列(413 bp, 346 bp)とスパイク領域の配列(547 bp, 493 bp)を増幅し、この検出を試みる。PCR産物の検出については、以下の検討を行う。(i)精製したPCR産物での基礎検討を行う。コロナウイルス由来のPCRを30-35サイクル行い、精製したものでまず測定を行う。精製したPCRについては、100-550 bpの間のPCR産物を用意し、PCR産物の長さ依存性、濃度依存性を確認する。(ii)未精製のPCR産物での検討を行う。コロナウイルス由来のPCR産物について、PCRサイクル数を30, 25, 20, 15, 10, 5と変化させたもので検討を行い、検出下限を求める。(iii)電気化学測定溶液の組成の検討を行う。ここでは、FND誘導体の濃度、測定温度について検討を行う。
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