2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Polymer Recognition and Imprinting Technology by Metal-Organic Frameworks
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21H01981
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
細野 暢彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00612160)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 分子認識 / 多孔性金属錯体 / 多孔性配位高分子 / 分離 / 精製 / 高分子 / クロマトグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、高分子構造(モノマー配列、立体規則性、末端構造等)のわずかな違いを厳密に認識し、その認識情報をもとに高分子を識別して分離する手法はない。もし、雑多な高分子の混合物から特定の構造を持った高分子のみを分離する技術があれば、従来の高分子化学に大きなパラダイム・シフトが起こる。 本研究では、分子が規則的に配列したナノ細孔を有する多孔性錯体結晶(Metal-Organic Framework: MOF)を利用し、従来の技術では難しかった高分子化合物の構造認識を達成し、その原理に基づいた革新的高分子分離・分析技術の開発を目指す。高分子認識原理の学術的理解、その原理に基づいた高分子化合物のカラムクロマトグラフィー分離分析法の開発を行うとともに、高分子を鋳型として用いた高分子インプリント技術による次世代の超特異的高分子認識技術の基礎を開発する。 本年度はMOFの微粒子を固定相として利用したMOFカラムクロマトグラフィーの開発、MOFの結晶成長過程に高分子を包接させる全く新しいアプローチで環状高分子を分離する手法の開発を行い、大きな成果があった。さらに本成果から派生した国際共同研究において、高分子を細孔内に包接させたMOFをガス分離メンブレンとして利用する新規ガス分離技術の開発にも成功している。それぞれの成果は国際的な学術誌へと掲載された。また、高分子のモノマー配列の認識、重合位置選択性(レジオレギュラリティ)の認識にも部分的に成功し、国内外における学会でこれらの成果の発表を行った。高分子がMOFの細孔へ吸着する物理的なメカニズムについても解明を進めており、熱力学的な要因を探るため様々な熱測定法を検討した結果、有効な方法を見出すに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はMOFによる高分子分離技術について、目的に沿った顕著な成果が論文として発表されるに至った。また、本研究を通した新しいアイデアに基づき国際共同研究を行い、国際共著論文として結実した。高分子がMOFの細孔へと吸着されるメカニズムの解明には難航しているが、新しく等温滴定カロリメトリーを用いた直接的な熱測定法を検討した結果、本手法がメカニズム解明に向けた有効な情報を多く与えることを見出した。MOFを用いた高分子のモノマー配列の認識にも引き続き取り組んでおり、二種類のモノマーからなる共重合体のモノマー組成に応じてMOFが選択的に吸着する現象を見出している。これまで得られた知見をもとに、様々な高分子種および高分子構造の認識へと研究対象を広げることができており、これまで困難であった高分子の重合結合位置規則性の認識や、タンパク質の高次構造の認識についても可能性を見出すことができた。したがって、本研究は目的の達成に向けて順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に得られた手がかりをもとに等温滴定カロリメトリーを利用した直接的熱測定を重点的に検討し、高分子のMOF細孔への吸着メカニズムの解明を進める。また、目的として掲げる高分子のモノマー配列認識の達成に向け、すでにあるMOFが特定のモノマー組成の高分子を選択的に細孔内へ取り込むことを見出しており、今後引き続きMOFの構造と高分子の構造との相関を明らかにしてゆく。MOFの細孔内構造と取り込まれる高分子のモノマー配列には相関があると考えられ、単結晶X線構造解析やNMR測定法を駆使して詳細に調査する予定である。ここで得られた知見をもとに、続いて高分子を鋳型としてMOFを合成するインプリント法を検討する。すでに本MOFはある高分子を細孔内に取り込みながら結晶成長し、生成することが試験的な実験で明らかとなっており、今後は高分子の構造がMOFへ転写されているかどうかを詳細に解析することで検討を重ねてゆく。また、本研究で得られた知見を利用することで、MOFの細孔へ高分子が貫通した新しい分子構造を有するMOF/高分子複合体が得られると考えられる。この新しい材料設計アプローチについても検討し、将来的な材料化学分野への応用可能性についても探る。
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