2021 Fiscal Year Annual Research Report
三相界面の次元拡張を実現するジャイロイド構造膜の開発
Project/Area Number |
21H02010
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
一川 尚広 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80598798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣田 雄一朗 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60632437)
渡辺 豪 北里大学, 理学部, 准教授 (80547076)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジャイロイド / プロトン伝導 / 三相界面 / 燃料電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
優れた燃料電池を創成するためには、燃料電池の部材である電極・電解質・セパレータ・触媒などの個々の設計も重要であるが、それらの部材の接合を制御することが極めて重要である。特に、『燃料相/電解質相/触媒相の三相の全てが接する界面(三相界面)』は反応活性点として機能する点であり、この三相界面を如何に多量に系中に作り出すかは発電効率に強く関与する因子である。本研究の目的は、三相界面の拡張を実現する方法論として、H+の輸送経路と水素の輸送経路がナノレベルで混在した材料を生み出し、燃料ガス相と電解質相を同一の擬似一次相内に融合することを目指す。更に、電極上の白金触媒表面をこのような擬似一次相で覆うことで、白金ナノ粒子の表面全体を反応活性点に変換する方法論の開発を目指す。 令和3年度は、ジャイロイド構造を生み出すための自己組織性分子の設計についての詳細な検討を進めた。双子型両親媒性Zwitterionのリンカー長の長さの重要性について、系統的に検討することができた。具体的には、アルキルリンカーやエチレンオキシド鎖をリンカーとした分子を合成し、それらの自己組織化挙動を詳細に比較することで、目的の構造形成に適した分子設計に関する重要な知見を得ることができた。これらの成果の一部については現在、論文を投稿中である。また、得られたジャイロイド構造構造膜のガス透過性を定量的に調べる方法についても、共同研究者と連携し、装置設計からサンプル設計までを工夫することで確立することができた。これらの成果の一部は、既に学術論文としてまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジャイロイド構造膜を作り出す技術に関しては大幅な進捗があった。更に、膜内にガスの透過経路を作り出す設計に関しても、大きな進展はあったが、このような経路を膜内で恒久的に維持するためには、幾つかの課題をクリアする必要があることがわかってきた。今後、様々な材料工夫を駆使することで、これらの課題に挑戦する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで重合性の両親媒性Zwitterionと酸を適切な割合で混合し、双連続キュービック相状態で重合することでジャイロイド構造膜を生み出す設計を確立してきた。また、液晶サンプル調整の際に、適切量のドデカンを混ぜ込み、重合後に除くステップを組み込むことで、ガスの透過経路を生み出すことに成功してきた。しかし、構造解析実験・ガス透過実験を行う中で、この透過経路の経時安定性が高くないことがわかってきた。そこで、今後の方針としては、酸に加えて、適切な塩(例えば、Mg(Tf2N)2)など)を混ぜ込み、膜のガラス転移温度を上げる設計により構造緩和の抑制に挑戦する。一般に、Zwitterionに対して酸を加えた場合に比べて、同アニオンを有する塩を加えた場合の方が、ガラス転移温度が格段に高くなることがわかっており、この点に着想したアイディアである。シミュレーションによるダイナミクス解析に関しては、ジャイロイドの3分岐経路構造内の拡散を見積もるのは非常に煩雑な設定が必要となってしまうため、長さ数nmの1次元経路をモデルとしたシミュレーションを行い、膜全体のガスの拡散速度を評価する。
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Research Products
(14 results)