2021 Fiscal Year Annual Research Report
New material design for peculiar photomechanical phenomena of organic photochromic crystals
Project/Area Number |
21H02016
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小畠 誠也 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00325507)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | フォトクロミズム / 結晶 / フォトメカニカル / ジアリールエテン / 相転移 / アントラセン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機フォトクロミック結晶のフォトメカニカル現象のうち、特異な変形挙動の解明とフォトメカニカル現象への新規な材料設計を進めている。これまで研究してきたフォトクロミック結晶のフォトメカニカル挙動には、伸縮、屈曲、ねじれなど単純な動きであった。令和3年度には、これらの単純な動きとは異なり、異常なフォトメカニカル挙動の創出とその現象の解明に着手した。主な研究成果として、ジアリールエテン双晶における異常な屈曲挙動のメカニズム解明、ジアリールエテン結晶における光誘起高速ピーリング、9-メチルアントラセン結晶における特異な光反応と結晶サイズ変化、ジアリールベンゼンのナノ粒子作成とそのフォトクロミック挙動、ジアリールエテン結晶の特異な光誘起往復運動などが挙げられる。具体的には、2つの結晶が接合した双晶において、2つの結晶の厚みの違いにより左から紫外光を照射した際と右から紫外光を照射した際に異なる結晶屈曲速度が認められた。詳細な解析により、双晶であることを見出し、双晶による異常なフォトメカニカル挙動が明らかとなった。高速ピーリングにおいては、世界最速の光誘起ピーリング挙動を実現した。得られた剥離結晶は光誘起屈曲挙動に適したサイズの棒状結晶であり、大きな結晶から適切なサイズの結晶を作り出す新しい作成手法となることを明らかにした。9-メチルアントラセン結晶では、特異は光反応挙動を見いだし、反応した分子の周囲が反応しやすくなることが明らかとなった。ジアリールベンゼンのナノ粒子においては、ナノ粒子作成法により、結晶性ナノ粒子とアモルファスナノ粒子を作り分けることができ、両者において光誘起着色体の熱反応性が大きく異なることを明らかにした。以上のように、特異なフォトメカニカル挙動の創製とそのメカニズムの解明に取り組んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、有機フォトクロミック結晶のフォトメカニカル現象のうち、特異な変形挙動の解明とフォトメカニカル現象への新規な材料設計を進めている。令和3年度には、主に特異な変形挙動の創出およびメカニズムの解明を行った。すなわち、ジアリールエテン双晶における異常な屈曲挙動のメカニズムの解明、ジアリールエテン結晶における光誘起高速ピーリング、9-メチルアントラセン結晶における特異な光反応と結晶サイズ変化、ジアリールベンゼンのナノ粒子作成とそのフォトクロミック挙動、ジアリールエテン結晶の特異な光誘起往復運動などを行ってきた。これらは本研究計画である特異なフォトメカニカル現象の創出と解明に密接に関わっており、特異なフォトメカニカル現象の解明が新たなフォトメカニカル現象の創出につながるため、今後の研究を推進するための重要な成果と考えている。これらに関しては論文執筆済みあるいは論文執筆中であり、令和3年度の既発表学術論文7報、学会発表17件を合わせ、十分な成果を発表しており、おおむね順調に進展している。さらに、特筆すべき点として、アメリカ化学会 Crystal Growth & Design 誌のCoverに研究内容が紹介され、大学プレスリリース、日刊工業新聞、各種webサイトに掲載されるなど研究成果が紹介された。また、Wiley社のAngewandte Chemie International Edition誌にBackcoverとして研究成果が紹介された。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度には、令和3年度に新たに明らかになった異常な光誘起往復運動に着目し、そのメカニズムを明らかにする。これまで類似の往復運動を他の化合物の結晶において見出しており、相転移によって誘起されることを明らかにしているが、令和3年度に見出した物質の結晶においては相転移は起こっておらず、新たなメカニズムの解明が必要である。現在、ジアリールエテン化合物の開環体と閉環体の電子遷移モーメントに着目して異常なフォトメカニカル挙動のメカニズムを予想しており、そのメカニズムの解明について取り組む。また、新たなジアリールエテン誘導体を合成し、結晶作製、X線構造解析、フォトクロミック反応挙動解析、示差走査熱量分析を行い、多形や相転移の有無について調べる。合成する化合物の設計方針としては、分子間相互作用を利用した種々のジアリールエテン誘導体を考えている。さらに、フォトメカニカル挙動についても詳しく調べ、多形の有無、結晶の形およびX線構造解析により、分子パッキングとフォトメカニカル挙動との関係について検討する。多形の存在する分子に関して可逆な結晶-結晶相転移については、加熱下での結晶観察および示差走査熱量分析により評価する。さらに、粉末X線回折で多形と相転移について詳しく検討する。相転移前後での単結晶X線構造解析により、空間群の変化(通常は変化しない)、セルパラメータの変化、および分子のコンフォメーション変化を明らかにするとともに、結晶の伸縮についても検討する。以上のように、異常なフォトメカニカル挙動の解明から新たなフォトメカニカル結晶材料の設計とアプリケーションに向けた取り組みを進める。
|
Research Products
(27 results)