2022 Fiscal Year Annual Research Report
熱力学的に安定なアニオン配列をもつ新奇酸窒化物強誘電体の開発と光電変換応用
Project/Area Number |
21H02024
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
廣瀬 靖 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (50399557)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関場 大一郎 筑波大学, 数理物質系, 講師 (20396807)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 酸窒化物 / 強誘電体 / 光電変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペロブスカイト型酸窒化物は結晶中のアニオン配列を制御することで可視光応答性と強誘電性を発現することが知られているが、強誘電相のアニオン配列は熱力学的には準安定なため、その合成は容易ではない。本研究では配位多面体の回転に基づく強誘電性(ハイブリッド間接型強誘電性)を利用することで、熱力学的に最安定なアニオン配列をもつ酸窒化物強誘電体を合成することを目的としている。 前年度はペロブスカイト層と岩塩層が交互に積層したRuddlesden-Popper (RP)構造をもつタンタル酸窒化物を中心に研究を進めたが、過剰なAサイトカチオンがBサイトを置換した単純ペロブスカイト相が優先的に成長するためRP型化合物の合成は困難なことが示された。そこで本年度は、RP構造と同様のハイブリット間接型の強誘電性が予想されているAサイト秩序型ダブルペロブスカイト酸窒化物LnLn'Ti2O4N2(Ln=希土類イオン)の合成に取り組んだ。前年度にRP型酸窒化物薄膜の合成に向けて構築した装置を用い、LaTiO2NとGdTiO2Nの人工超格子をLayer by Layerで作成したところ、繰返し周期が5~10ユニットセルの試料で、ペロブスカイト酸窒化物としては初めて超格子由来の明確なサテライトピークを観察した。一方、周期が3ユニットセル程度まで短くなるとサテライトピークは消失し、LaTiO2NとGdTiO2Nの界面における相互拡散の進行によりAサイトの秩序が失われることが示唆された。 並行して、別のタイプの間接型強誘電体であるYMnO3型酸窒化物ASnO2N(A=Y, In)のエピタキシャル成長にも取り組んだ。窒素プラズマ支援パルスレーザー堆積法では窒化力が不十分で合成中にSnが還元されたため、反応性スパッタ法による合成を試みた。得られた薄膜は化学量論に近い組成を有していたが、YMnO3型ではなく蛍石型であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していたLaTiO2NとGdTiO2Nの超格子薄膜の合成には成功したが、目的化合物である両者が1層ずつ交互に堆積したLaGdTi2O4N2の作成には至っていない。早急に結晶成長条件を探索し、強誘電性を評価可能な薄膜を合成する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
強誘電性および光電変換特性を評価可能な試料の合成を最優先課題とし、Aサイト秩序型LaGdTi2O4N2薄膜の合成に注力する。具体的には、薄膜成長温度を下げてLaTiO2NとGdTiO2Nの界面における相互拡散を抑制することを試みる。ABX3/A'BX3超格子のハイブリッド間接型強誘電性は各層の厚みが奇数であれば発現すると予想されるため、各層が1層ずつ交互に堆積したLaGdTi2O4N2の合成が困難な場合は、3層または5層ずつ堆積した超格子薄膜を用いて八面体回転を含む詳細な結晶構造解析および物性評価を行う。
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