2021 Fiscal Year Annual Research Report
混合導電性酸化物の酸素透過動力学全容解明に基づく選択的酸素高透過性材料の構造設計
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21H02029
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松田 元秀 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (80222305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 達 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (50267407)
下條 冬樹 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (60253027)
永井 杏奈 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (30910400)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 混合導電性酸化物 / 酸素透過性 / 配向体作製 / 磁場配向 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の初年度となる昨年度は、これまでの研究実績ならびに研究計画の立案時に実施された文献調査などから高い酸素透過性が期待できる系としてRuddlesden-Popper型Ni基層状ペロブスカイト化合物に注目し、異元素導入による組成制御を施した組成系を中心に検討を進めた結果、(1)n=1のNd2NiO4のNiサイトにCoを導入し、そのCoの導入量が半分近くになった組成系では結晶の磁気異方性に変化が現れ配向組織の制御に対し異なるプロセスが必要になる、(2)Nd2Ni0.8Co0.2O4の配向組織体を用いた酸化物イオンの拡散性と表面交換反応性の評価からCoの導入は酸化物イオンの拡散性を高める、(3)またそのCoの導入により高められた酸化物イオンの拡散性は結晶のc軸方向つまり積層方向での酸化物イオンの動きに起因し発現する、(4)Coの導入を伴わないNd2NiO4を用いた酸化物イオンの拡散性と表面交換反応性の温度依存性から、酸化物イオンの拡散性は結晶構造によって大きく異なり、高い酸化物イオンの拡散性は結晶が正方晶領域にあるときに観測される、といった知見が見出された。Coの導入は表面交換反応性にも効果があると研究着手時には期待されたものの、昨年度実施した検討の中では明確な効果は観測されず、今後の検討に委ねられた。また、正方晶⇔斜方晶の構造相転移前後で表面交換反応性の変化を注意深く検討したが、大きな違いは観測されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
混合導電性化合物が示す酸素透過性は、材料内での酸化物イオンの拡散性と材料表面で生じる交換反応性によって大きく支配されると考えられる。昨年度実施した検討から、結晶構造内へのCoの導入が酸化物イオンの拡散性を高めることが明らかになり、本研究で目指す「優れた選択的酸素高透過性を導く材料組織の設計指針」に対し有益な知見であることから、現在までの進捗状況を(2)おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度の検討結果を踏まえ、Coを積極的な導入する組成系を中心に検討を進めるとともに、表面交換性を高める構造的因子の探索を引き続き行う。組成や配向性が異なる試料の作製と酸素同位体交換処理が施された試料を用いて拡散プロファイル測定に注力する計画である。
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