2022 Fiscal Year Annual Research Report
単一粒子分光解析を用いた希土類配位結晶の刺激発光機能の解明
Project/Area Number |
21H02031
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中西 貴之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (30609855)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 刺激発光 / 希土類配位蛍光体 |
Outline of Annual Research Achievements |
刺激発光は、破壊など力学刺激により結晶固体が発光する現象であり、近年は学術的な見地だけでなくセキュリティなど実用的な見地から材料として注目を集めている。本研究申請ではソフトな希土類配位結晶が示す刺激発光体の学理の解明とその材料化応用に向け、一粒の結晶粒子に注目した顕微鏡下での単粒子分光解析を取り入れた独自の学術研究を進めており、その特異現象の原理と刺激発光体創出に関する材料設計指針を明確することを目的に研究を進めている。具体的には、希土類配位化合物の単結晶(単一粒子)を用いた顕微単粒子診断解析により、結晶構造および刺激発光を含めた光物性、破壊に関する機械特性を系統的にデータ収集し、他の結晶系の結果と比較をしつつ体系的に研究を進めている。上記の詳細解析を行うため、初年度は顕微システムの構築に力をいれ一粒子からの刺激発光を捉えることに成功し、次年度は温度やガス環境を変更できる測定環境可変の顕微測定ステージなど実験装置の立ち上げて、その本格運用により初めて得られる、種々の光物性解析を行っている。またこれまでに上記の顕微分光評価システムを用いて、新しい刺激発光性の配位高分子結晶の発見を含めて、新規の希土類配位結晶を複数種類を見つけることができており、その光物性評価を同時に進めることで、質と量を揃えた物質創製の学術研究を行っている。また刺激発光特性に関連して、希土類配位高分子結晶の形態制御および分子の機械的強度に関する検討も行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究である“1つの単粒子での刺激発光現象を捉える”に関しては計画通り進み、結晶粒1つからの可視発光観測(スペクトル+画像)と放射速度定数解析に必要な刺激蛍光寿命τ/sが測定できた。当該2年目の計画では測定環境可変の特注顕微ステージの作製と実験を行い外気環境に強く影響を受ける配位蛍光体材料の光物性を調べ、環境センスティブなPLとTLの温度依存性を測ることで刺激発光性の発現に関する知見を得た。また計画通り本研究で得られた既知材料を用いて、配位子置換により配位化合物の結晶構造を変化させず発光中心である希土類周りの幾何学構造、局在電子状態のみを変化させた化合物との光物性比較では、本研究提案で予測した活性点が明確な刺激発光の活性中心になっていることが示唆され、現在はより詳細な物性研究を継続しており本質的な材料の光化学に迫りたいと考えている。具体的な成果として、結晶性配位化合物の光物性はその固体形態に応じて機能を変化することが当該研究を通してわかっており基礎的な形態変化性に関する材料論文として2報を報告し、マクロな刺激発光の詳細解析に関する論文1報を報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
本目的は強力な『刺激発光を示す希土類配位結晶』の設計指針を明らかにする材料学理の構築を基軸にしている。具体的に、顕微鏡下の一つの刺激発光の単結晶粒子(数10μm)に対して、力学刺激による分光測定/解析を行い、その特異現象の光物理と刺激発光性を創出する物質設計の確立を行い材料化学の深化を行っている。 初年度の研究計画目的である“1つの単粒子での刺激発光現象を捉える”に関しては計画通り進み、結晶粒1つからの可視発光観測(スペクトル+画像取得)と、放射速度定数解析に必要な刺激蛍光寿命τ/sが測定できた。2年目の当該計画では外気環境(例えば酸素/水分(湿度)/圧力/ 温度)に強く影響を受ける配位蛍光体材料の特徴を活かし測定環境可変の光学ステージ設計してその実験検討を開始した。新物質も見つかっており、その代表材料を用いた上記の刺激発光特性は、光励起と刺激励起で明確に異なる物性値(放射速度定数)を示すことがわかった。 その成果を受けて3年次は、上記の継続として測定系の本格運用と、多角的な見地から材料系をこれまでのポリマー結晶から既知の単核錯体など含めた刺激発光体に種類を増やし、その温度等のパラメータ変化に対して刺激発光と光励起発光の本質的な光物理の違いを明らかにする。また予定通り最終年度としてこれまでの成果のまとめを行う。
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Research Products
(6 results)