2021 Fiscal Year Annual Research Report
Lowering operation temperatures of protonic ceramic fuel cells by proton-pumping effects
Project/Area Number |
21H02035
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青木 芳尚 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50360475)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 燃料電池 / 水素透過 / プロトン伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素透過膜支持型燃料電池(HMFC)は水透過合金/電解質膜-ヘテロ界面での酸化物イオンブロッキングにより発現するプロトンポンピング効果を発現し、高い出力を生むことが知られている。水素透過膜支持型燃料電池(HMFC)における、プロトンポンピング効果の最大化を目標に以下の検討を行った。第一に電解質酸化物の酸素欠損量がプロトンポンピングに及ぼす影響を実証するために,異なる酸素の非化学量論比をもつBaZr1-xScxO3-2/x (x = 0.2 and 0.5)を電解質としたHMFCについて実験とシミュレーションによる解析を行った。これらの解析によって,酸素欠損量の多いBaZr0.5Sc0.5O3-δではプロトンポンピング効果がより顕著に発現されるため,カソード近傍のプロトンの界面移動がより促進されることがわかった。さらに,プロトンポンピング効果によって促進されたプロトンの界面移動は,水の生成および脱離反応を促進することで三相界面における触媒活性サイトを速やかに再生させて酸素の表面交換反応を促進し,それによってカソード反応が吸着酸素種の拡散を伴わない経路を辿った結果,カソード分極抵抗が著しく小さくなることがわかった。従って,BaZr0.5Sc0.5O3-δからなるHMFCは,400 °Cの低い作動温度でも0.54 Ω cm2の小さな分極抵抗を実現し,0.4 W cm-2を超えるピーク出力を達成できた。この値は,従来のPCFCの性能を大きく上回るものである。これらの結果は,HMFCがカソード分極における過電圧をより効率的に活用できるシステムであることを示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の理由は、化学的によく似た組成・構造をもち、一方酸素欠損量が大きく異なる金属酸化物を電解質としたHMFCの発電性能比較を通じ、本プロジェクトの第一目標であるプロトンポンピング効果の実証につながったことである。HMFCでは、金属酸化物電解質における酸化物イオンマイナー伝導が水素透過合金アノードによってブロッキングされ、それによって酸化物イオンの蓄積、さらに対電荷であるプロトンの蓄積が起こり、これにより電解質の伝導率とプロトンの活量の増加が生じる(プロトンポンピング効果)。そこで、BaZr0.5Sc0.5O2.75(BZSc5)とBaZr0.8Sc0.1O2.9(BZSc2)を電解質に用いたHMFCを400℃での性能に関して詳しく比較したところ、BZSc5のセルは、BZSc2よりもはるかに1.5倍高い出力を示し、更に400℃にて9.8Vで0.4 A cm-2に相当する出力を達成した。更にこの出力向上の原因は、電解質抵抗の減少と、カソード/界面近傍におけるプロトン抵抗の減少にあることが分かった。従って酸素欠損の多い電解質材料を用いると、プロトンポンピング効果の増強により、電極反応抵抗の提言が起こることが実証された。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度までに、酸素欠損を多く有する電解質を用いたHMFCで、プロトンポンピング効果が増強されることを立証した。これに基づき2022年度は第二の目標である、「プロトンポンピングの最大化を志向した電解質材料開発」を行う。具体的には、様々な高酸素欠損型電解質薄膜を電解質としたHMFCの性能を調べ、プロトンポンピング効果を最大化できる材料組成を見出す。 さらに第三の目標である「Pd代替水素透過合金アノードを使用したHMFCの構築」にも着手する。HMFCの社会実装の困難さは、水素透過合金に貴金属Pdを必要とする点にある。これに対し我々は先行研究で、VNi合金およびVAlNi合金が350℃までの温度では、燃料電池に十分な水素透過率を有すること、また水素脆化が小さいことを確認している。これらを水素透過アノードに用いた非Pd系HMFCを構築する。
|