2021 Fiscal Year Annual Research Report
RNAダイナミクスの学理構築とRNA標的薬剤アッセイ系の構築
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21H02059
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川井 清彦 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50314422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田邉 一仁 青山学院大学, 理工学部, 教授 (40346086)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 1分子計測 / RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、RNA構造転移の測定法の1つとして、三重項-三重項エネルギー移動を利用した、RNA構造転移の測定法の開発に取り組んだ。一重項-一重項エネルギー移動であるFRETでは、一般にエネルギードナー、アクセプター間の距離が50Å程度以上変化する大きな構造転移の観測に優れている。これに対し、三重項-三重項エネルギー移動では、ドナー、アクセプター間の衝突が必要であるため、ドナー、アクセプターが衝突するRNAの分子運動に絞って追跡できる。ここで、1分子蛍光観察特有の現象であるblinkingを利用し、蛍光相関解析から三重項-三重項エネルギー移動が起こるのに要する時間(τT)を求める(1/τT はRNA分子運動速度に対応)。アクセプターとしては1,4,5,8-cyclooctatetraene(COT)を用いる。COTは、三重項-三重項エネルギー移動によりエネルギーを受け取り、100 μs以内にそのエネルギーを熱として放出し、蛍光分子の光安定性を向上させることが報告されている。蛍光分子としてATTO 647N、市販のCOTアミダイト誘導体を用いて、DNAをプラットフォームとしてblinkingにより三重項-三重項エネルギー移動の観測を試みたところ、τTがATTO 647NとCOT間の1本鎖DNAスペーサが長くなるほど長くなった。また、DNAスペーサがより柔軟なポリTの時に、より剛直なポリAと比べτTが長くなり、τTがDNAの1本鎖ダイナミクスにより起こるATTO 647NとCOTの分子衝突に要する時間を反映している、すなわち、τTの測定により核酸の構造転移を観測できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度当初の目的であった、三重項-三重項エネルギー移動を利用した、RNA構造転移の測定法の開発に成功した。RNAの構造転移についてもデータが得られ始めており、論文化を急いでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、三重項-三重項エネルギー移動を利用した、RNA構造転移の測定法を確立した。RNA構造転移を観測するためには、得られた相関シグナルの時間的なゆらぎを追跡する必要がある。2022年度は、RNA構造転移のダイナミクスを測定するため、Pythonを用いた相関データの時間変化を解析する手法開発に取り組む。具体的には、0.1秒刻みに0.5秒の蛍光ゆらぎデータを相関解析して、書き出すプログラムを作成する。また、もう一つのRNA構造転移の測定法において重要となる、パルス解析についても、Pythonを用いた解析を検討する。
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Research Products
(7 results)