2021 Fiscal Year Annual Research Report
In mice synthesis of bioactive compounds and cancer therapy by biocompatible metal catalysts
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21H02065
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 克典 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (00403098)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生体内合成 / がん治療 / 糖鎖 / 人工金属酵素 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、生体内反応の系として、触媒的環化反応による生物活性分子の合成(分子合成)を行なった。この際、マウス内での反応基質の有効濃度を考えて、分子内環化反応による生物活性分子の合成を検討した。すなわち、金(III)触媒のpai親和性をトリガーとした、アセチレンに対する分子内アミノ基付加環化反応を利用して、様々な置換基を持つフェナントリジニウム構造を構築することに成功した。フェナントリジニウム構造を持つ化合物は、細胞のDNAに結合することで細胞増殖を抑制することが知られており、抗がん活性物質として注目されている分子を効率的に合成することもできた。環化前駆体から抗がん活性分子へと変換されることによって、特定のがん細胞に対して100倍の活性向上を実現した。 さらに、報告者が実績を持つ生体内で高い活性を持つルテニウム触媒を用いることにより、分子内メタセシス反応に続く脱水反応を経て、生体内でのベンゼン誘導体の合成を検討した。その結果、薬理活性に特徴的な基盤構造であるナフタレンやビフェニル、ヒドロキノンやアントラセン、カルバゾールやジベンゾフラン、さらにはベンゾチオフェンやフェナントレン構造を効率的に合成することができた。さらにこの生体内合成反応を用いて、チューブリン阻害剤であるコンブレタスタチンA-4天然物誘導体を合成することにも成功した。この場合においては、環化前駆体から抗がん活性分子へと変換されることによって、1,000倍の抗がん活性向上を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、生体寛容性の金属触媒反応を用いて、2つの効率的な抗がん活性分子の合成に成功した。さらに、環化前駆体から抗がん活性分子へと変換されることによって、抗がん活性の著しい向上を実現し、研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度で触媒的環化反応による生物活性分子の合成(分子合成)を実現したので、今後は触媒的脱保護による生物活性分子の放出(分子放出)やがん組織への生物活性分子の触媒的複合化(分子複合化)を検討する。金(III)触媒またはパラジウム(II)触媒を用いて、触媒的環化反応をトリガーとしたドキソルビシンやエンドキシフェンを代表とした抗がん剤の放出を血液、およびマウス内で検討する。 一方、細胞表面リジン残基へのプロパルギルエステルによる金(III)触媒アミド化反応を用いて、接着阻害分子を代表とする抗がん活性関連物質をがんに導入して治療できる触媒系を確立する。令和3年度に確立した触媒系と合わせて、これら3つの金属触媒反応システムを一般化する。 さらに、これら人工金属酵素への「糖鎖パターン認識」の付加を行う。HeLa(ヒト子宮頸がん)、A549細胞(ヒト肺がん)、およびSW620(ヒト大腸がん)を対象のがんと設定する。このように得られた糖鎖付加人工金属酵素に対して、細胞内移行やがんへの集積を確認した後、がんで人工金属触媒を効果的に駆動させることにより、生体内合成化学治療を実施する。
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