2021 Fiscal Year Annual Research Report
Evolution of STOP1 system for management of multiple stress tolerance
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21H02088
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
小山 博之 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90234921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井内 聖 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 専任研究員 (90312256)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | STOP1 / シロイヌナズナ / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
STOP1転写因子は、植物の陸上適応に必須の転写因子と考えられている。その転写制御系を植物間で比較することは、ストレス耐性進化を理解するために重要と考えられる。特に注目される点は、陸上適応時の形質に根のアルミニウム耐性と酸耐性(二つの土壌ストレス耐性)とともに、冠水耐性を併せ持つことである。これは、陸上適応初期に有利に作用したと考えられる。一方、STOP1は乾燥耐性には負に作用し、抑制する経路を進化させたと考えられる。このような場合には、STOP1自身の進化に加えて、別の耐性制御機構とクロストークを生じた可能性が高い。このような仮説の元、STOP1制御遺伝子PGIP1のシグナル伝達経路をeGWASにより解析し、PIシグナルと共制御されることを見出した。NAC027転写因子が、そのシグナル上流に位置し、これは同じく制御遺伝子であるALS3の上流に位置する転写因子であった。これは、STOP1自身の発現やそれ自体の転写制御系には存在せず、Al耐性応答に必要な転写因子であることがわかった。一方、ゼニゴケのAl耐性はSTOP1依存性であるが、その標的にはPGIP1が存在せずNAC転写因子のコピー数も少ない。これらのことから、NAC027はアルミニウム応答進化の上で重要な遺伝子の一つと考えられた。一方、窒素・アンモニウム比の変化など、細胞質pH制御経路の制御経路は、ゼニゴケではシロイヌナズナよりも弱く制御されていることなど、鄭pH耐性の進化にも転写制御が関与していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STOP1は植物内でのコピー数が少ない。このことは、制御する複数の形質を切り分けるためには、コピー数が多い転写因子と協調することを示唆している。実際に、eGWASを行うと、大きなジーンファミリーを形成するNAC転写因子(NAC027)が、複数の制御遺伝子で検出されたことから、これがAl耐性応答と、乾燥耐性を切り分ける一つの要因と考えられた。一方、バクテリア型の輸送タンパク質がゼニゴケにおいてSTOP1制御であることなどとも矛盾しない。このような制御の中で、ゼニゴケのプロモーター解析では、STOP1とアルミニウム耐性遺伝子を共制御する遺伝子が見つかるなど、進化に関わる知見は十分に獲得できている。藻類のトランスクリプトーム解析のデータ解析が若干遅れているが、本年中には予定通りの解析が実施できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更はない。特に、共制御転写因子を特定したことの意味は大きい。藻類でのアルミニウム応答の解析(STOP1独立の経路の解析)、ゼニゴケでの乾燥耐性に関する解析(STOP1と乾燥耐性の関係の解析)が望まれる。一方、タンパク構造の進化についても、トランスクリプトームにより、C末端における標的遺伝子群の進化を同定できると考えている。
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Research Products
(2 results)