2022 Fiscal Year Annual Research Report
Evolution of STOP1 system for management of multiple stress tolerance
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21H02088
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
小山 博之 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90234921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井内 聖 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 専任研究員 (90312256)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | STOP1 / アルミニウム耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球温暖化は降雨パターンに影響することを通じて、従来よりも多雨(洪水、冠水)、少雨(乾燥、干ばつ)被害を助長すると予測されている。そのため、現在の作物品種には乾燥耐性と冠水耐性を同時に向上させることが求められるとともに、栽培する過程には脱炭素化も求められ、有機農法などに適した品種特性を導入することも求められている。本研究で対象とするSTOP1は、冠水耐性、酸性土壌耐性(最も深刻な土壌ストレスに対する耐性)、有用微生物を介した植物免疫(正)に加えて、栄養獲得能力も制御することが、モデル植物シロイヌナズナで発見されている。この研究では、このような複数の形質を制御する“多面発現制御”の理解と、STOP1依存・非依存の耐性機構を植物界全体で理解することを通じて、現在使用している作物の限界を超えた、品種改良戦略を立てるための基盤を提供するものである。 当該年度は、モデル植物シロイヌナズナにおいては、窒素栄養が根圏pHの影響を受けながら根系形状の形成にSTOP1が関与することを見出した。一方、ローカル(種分化が進みある植物種と近縁種でのみ生じている現象)な事例として、シロイヌナズナで見出された欠損アルミニウム耐性機構が、近縁種間では差異があることも予測できた。このことは、耐性モジュールの導入などの合成生物学的手法を活用することにより種内の変異で最適化するマーカー育種などとは異なる、新品ス育成手法の有効性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、コケなどで遺伝子破壊を進めると共に、シロイヌナズナとイネなどの差異から得られたSTOP1制御システムの消長に関して一定の成果を得るとともに、窒素・酸・低酸素ストレスなどの相互作用の一端を解明することができた。この研究では、種を超えた耐性強化戦略として、ある遺伝子モジュール(耐性を制御・調節する遺伝子のセット)を、それらを欠損するか不完全な植物に導入する、いわゆる合成生物学育種の基盤構築を狙っている。この点においては、モデル植物シロイヌナズナの欠損モジュールの同定において研究を進めることができている。一方、窒素栄養とストレス耐性の関係や、アルミニウム特異的制御機構の解明などにおいても、論文2編が投稿・審査中であり、成果公表の点でもおおむね順調であると判断している。 実験的な遅れとしては、コケや藻類のアルミニウム処理方法の検討などに時間を要している点であるが、それらの材料で一般的に用いられる培養条件に、高等植物のアルミニウム処理方法を取り入れることで、ほぼ問題が解決できている。この、培養条件の確立は種間のストレス耐性を比較するに際して極めて重要であるが、期間内に正確な評価ができると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度であることから、新たな取り組みとしては合成生物学的な手法の有効性を検証する遺伝子組換え(シロイヌナズナ毛状根を活用)と、既に作成している遺伝子組換え体のデータ解析に主眼を置く。特に、異なる材料(種)の耐性を比較する際には、それぞれの培養条件でストレス処理することが必要となるが、イオンストレス(特にアルミニウム)では、共存イオンの影響などを考慮・最小化する必要がある。このことが、地味ではあるが、種間差の正確な理解には極めて重要と考えている。そのため、モデル植物などで開発されたストレス処理条件の”考え方”を、溶液化学モデルや熱力学モデルを導入を含めて活用して、ストレス処理条件の厳密化を実現する。既に、組換え体に関してはほぼ獲得していることから、研究を進めることが可能と判断している。 一方、ゲノムワイド転写の種間比較では、タンパク質ドメインの比較や、重要なタンパク質をコードする遺伝子では、タンパク質構造の近縁性を比較することも必要であると考えられている。この点に関しては、特にSTOP1タンパク質の構造予測を実施して比較することが重要と考えられるため、海外研究機関(インド工科大学、生物工学)の協力を一部受けながら実施することを予定している。これらにより、十分な成果が得られると考えている。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Al 耐性遺伝子PGIP1 の発現量ゲノムワイド関連解析によるPGIP1 発現を制御するシグナル伝達経路と遺伝子の同定2022
Author(s)
Raj Kishan Agrahari, 榎本 拓央, 伊藤 弘樹, 中野 友貴, 柳瀬 笑子, 渡部 敏裕, 井内 聖, 小林 正智, 山本 義治, 小山 博之, 小林 佑理子
Organizer
日本土壌肥料学会