2021 Fiscal Year Annual Research Report
宿主にとってよそ者であるプラスミド自身が外来遺伝子のサイレンサーを持つ理由の解明
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21H02097
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水口 千穂 (鈴木千穂) 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10733032)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プラスミド / 核様体タンパク質 / H-NS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プラスミドと宿主染色体にコードされるH-NSファミリータンパク質(核様体タンパク質の一種)が協調的に機能するメカニズムを様々なホモログで明らかにすると同時に、各ホモログ間での共通点と相違点を明らかにすることを目指している。2021年度は、(1)H-NSファミリータンパク質のプラスミド安定性への寄与の評価、(2)プラスミドと宿主染色体由来のH-NSファミリータンパク質のDNA結合箇所の解析、を中心に進めた。 (1)では、Pseudomonas属細菌を主な宿主とするプラスミドpCAR1上のpmrを破壊した際の、pCAR1の宿主細菌内での安定性とpCAR1保持株の集団内での生残性を評価したが、P. putida KT2440株、P. resinovorans CA10dm4株のいずれを宿主とした場合にも野生型株との違いは認められなかった。一方、CA10dm4株の染色体上遺伝子mvaTを破壊した際には、pCAR1の安定性が顕著に低下した。腸内細菌を宿主とするプラスミドpSfR27では、pSfR27上のsfhを破壊した際にはpSfR27の安定性は変化せず、pSfR27保持株の集団内での生残性が低下したことが過去に報告されている。以上より、腸内細菌とPseudomonas属細菌ではH-NSファミリータンパク質の機能に何らかの違いが存在することが明らかとなった。 (2)ではKT2440株を宿主とし、pCAR1保持株と非保持株、pCAR1上のpmrと染色体上のturA、turB破壊株についてChIP-Seq解析を実施した。意外なことに、pCAR1の有無(すなわちPmrの有無)にかかわらず、染色体上のTurA、TurBの結合箇所の大半は変化しなかった。ChIP-Seqの結果はPmr、TurA、TurBのヘテロ複合体の結合箇所を示している可能性もあるため、今後さらなる解析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、H-NSファミリータンパク質をコードする遺伝子の破壊株の作製とその解析については一定の成果を得ることができた。一方、2021年度は当初、各種H-NSファミリータンパク質の発現と精製についても実施する計画としていたが、購入を予定していたタンパク質精製用装置が、新型コロナウイルス感染症による影響(供給不足による実験装置構成品の納期遅延)により年度内の調達が困難となったため、翌年度への繰越を行い、本事業を半年間延長した。その結果、ほぼ計画通りに研究が進展したため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
P. resinovorans CA10dm4株の、H-NSファミリータンパク質をコードする染色体上遺伝子mvaTを破壊するとプラスミドpCAR1が不安定化する現象は、各種H-NSファミリータンパク質の共通点と相違点を明らかにする上で利用できると考えられる。今後はCA10dm4株のmvaT破壊株を材料として、MvaTと他のH-NSファミリータンパク質との互換性の評価を軸として研究を推進する。また、in vitroでの多量体形成能やDNA結合能の評価については予定通り実施する。
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