2021 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜と細胞外構造体の協調的相互作用によるTORC2シグナルの活性制御モデル
Project/Area Number |
21H02103
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 善晴 京都大学, 農学研究科, 教授 (70203263)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 酵母 / TORC2 / CWI経路 / Pkc1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞外構造体と細胞膜とが、その健全性を相互にモニタリングする機構の存在を明らかにすることを目的とする。具体的には、酵母の細胞壁健全性を司るCWI(Cell Wall Integrity)経路と、細胞膜の動態変化により活性化されるTORC2(Target of Rapamycin Complex 2)経路という2つのシグナル伝達経路の活性制御における相互作用について検討する。 これまでの研究から、オーレオバシジンA(AbA)による酵母のTORC2-Ypk1/2シグナルの活性化が、ステロールとの親和性がある薬剤であるエデフォシンにより阻害されることを見出している。その一方で、エデフォシンはCWI経路の構成因子であるMpk1-MAPキナーゼのリン酸化レベルの上昇を引き起こした。CWI経路は、細胞膜上に存在する細胞壁ストレスセンサータンパクであるWsc1/Mid2、低分子量Gタンパク質であるRho1、ならびにPkc1-Mpk1経路から形成される。そこで、wsc1Δmid2Δ株におけるエデルフォシンによるMpk1のリン酸化を検討した結果、リン酸化は認められなかった。次に、Wsc1/Mid2の過剰発現、Rho1の構成的活性化変異体、ならびにPkc1の構成的活性化変異体の発現株を作成して検討を行った。その結果、これらの条件においてもTORC2-Ypk1/2シグナルの活性化の抑制が観察された。これらのことから、CWI経路の活性化はTORC2-Ypk1/2シグナルの活性化に対して抑制的に作用していると考えられた。さらに、その抑制効果はmpk1Δ株でも観察されたことから、Mpk1-MAPキナーゼがTORC2-Ypk1/2シグナルの活性化を抑制するのではなく、Pkc1が抑制的に作用していると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AbAやミリオシンといった細胞膜ストレスによるTORC2-Ypk1/2シグナルの活性化のエデルフォシンによる抑制作用が、Wsc1/Mid2-Rho1を介してPkc1の活性化に起因していることを結論づけることができた。また、mpk1欠損株でもエデルフォシンによるTORC2-Ypk1/2シグナルの活性化の抑制効果が見られたことから、CWI経路のうちのPkc1が何らかの作用を果たしていることも明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
TORC2-Ypk1/2シグナルの活性化においては、細胞膜の構造体であるeisosomeからSlm1/2が遊離し、TORC2が存在するMCT画分へと移動するモデルが提唱されている。そこで、エデルフォシンによるTORC2-Ypk1/2シグナルの阻害機構について、エデルフォシンがeisosomeの構造や形成に及ぼす影響について検討を進める。また、Pkc1がeisosomeに及ぼす影響などを検討する。
|