2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H02111
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
高妻 篤史 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (20634471)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 微生物電気化学 / 微生物電気合成 / バイオフィルム / 細胞外電子伝達 / 発現制御 / Shewanella |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は次世代の物質・エネルギー変換システムとして期待される微生物電気化学システム(bioelectrochemical systems; BES)に着目し、その効率向上において鍵となる電気化学活性バイオフィルム(electrochemically active biofilm; EABF)の形成と活性を制御するための知的・技術的基盤を確立することを目的とする。本研究の開始以前に、研究代表者らは電気化学活性微生物(electrochemically active bacteria; EAB)のモデル生物であるShewanella oneidensis MR-1株において、EABFの制御に重要な細胞内シグナル物質(c-di-GMPおよびcAMP)を同定した。しかし、これらの物質が関与するシグナル伝達カスケードには不明な点が多い。そこで本研究ではMR-1株におけるc-di-GMPとcAMPのシグナル伝達カスケードの同定とEABFの制御機構の解明、およびこれらのシグナル伝達カスケードを利用したEABF高機能化技術の開発を行う。 2021年度はc-di-GMPを介したシグナル伝達系によって制御される遺伝子を探索するため、c-di-GMP合成酵素遺伝子(dgcS)の過剰発現株(dgcS-OE株)を作成し、遺伝子発現および表現型の変化を解析した。DNAマイクロアレイを用いたトランスクリプトーム解析によって本株の遺伝子発現プロファイルを野生株と比較した結果、dgcSの過剰発現(c-di-GMPの合成促進)によってバイオフィルム形成や電流生成に関与する多くの遺伝子発現が活性化していることが明らかになった。またdgcSの過剰発現によって電極上へのEABF形成が顕著に促進されたことから、dgcSの発現制御がEABFの活性化に有効なアプローチであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
c-di-GMPのシグナル伝達カスケードの解明については、dgcS-OE株を用いたトランスクリプトーム解析によって本シグナル伝達系の制御下にある遺伝子を網羅的に探索し、従来c-di-GMPによって制御されることが知られていなかったものを含む多数の遺伝子が本シグナルの制御下にある可能性を示すことができた。また、dgcSの発現促進によってMR-1株のEABF形成が活性化されたことから、c-di-GMPがEABF形成の制御において重要な役割を果たすことが確認された。これらの知見は本研究において開発を目指すEABF高機能化技術の基盤となるものであり、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はなく、おおむね当初の予定通り計画書記載の実験を実施していく予定である。2022年度はMR-1株においてEABF形成に関与するシグナル伝達カスケードを同定するため、dgcSの発現を制御する転写因子の同定を目指す。既に当該転写因子の候補を数個に絞り込んでいるため、これらの転写因子の欠損株を作成し、dgcSの発現に与える影響を解析する。また、本シグナル伝達系を利用してMR-1株の電流生成(特にカソード電流生成)を活性化させる方法を検討する。カソード電流の評価では作用極電位を-0.6 V (vs. Ag/AgCl)に設定した3電極式電気化学セルを使用し、フマル酸を添加した場合の還元電流の生成量を指標とする。
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Research Products
(4 results)