2022 Fiscal Year Annual Research Report
Enzymatic insight into the microbiota formation in infant guts
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21H02116
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片山 高嶺 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (70346104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伏信 進矢 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00302589)
奥田 修二郎 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00512310)
北岡 本光 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60353984)
杉山 友太 群馬大学, 食健康科学教育研究センター, 助教 (80908749)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 共生 / ムチン糖鎖 / ビフィズス菌 / スルホグルコシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、腸管ムチン糖鎖に作用する酵素について解析を行った。具体的には、Bifidobacterium bifidumのスルホグリコシダーゼ(BbhII)について解析を行った。ムチン糖鎖はシアル酸や硫酸による修飾を受けており、これらの修飾は腸内細菌による過剰なムチン分解を防ぐためとされているが、一部の腸内細菌はこれらの修飾基を外すための酵素を有している。シアル酸はシアリダーゼによって、硫酸基はスルファターゼによって分解されると考えられているが、本研究ではスルホグリコシダーゼに着目した。スルホグリコシダーゼとは6-sulfo-N-acetylglucosamine (GlcNAc6S)を遊離する酵素である。まず、ヒト乳児糞便サンプル中にGlcNAc6Sが検出されること、またその量がB. bifidumのbbhII遺伝子量と高い正相関を示すことを見出した。次に、コンベンショナルマウスにB. bifidum野生型を、また無菌マウスにB. bifidumの野生型およびbbhII変異型を投与して糞便中ムチン糖鎖の解析を行い、スルホグリコシダーゼが実際にムチン糖鎖の分解に関与していること、また遊離したGlcNAc6Sが他の細菌にクロスフィードされていることを明らかとした。次にX線結晶構造解析を行い、BbhIIのGlcNAc6S特異性の構造基盤を明らかとすると共に、活性ドメインのN末端側に糖質結合モジュール(CBM)32が存在していることを明らかとした。本CBMの存在は、BbhIIがムチンから効率よくGlcNAc6Sを遊離するのに重要な機能を有しており、このドメインを欠失した場合、pNP基質からのGlcNAc6S遊離能には全く変化がないにもかかわらず、ムチン糖鎖からのGlcNAc6S遊離能は大きく減少した。以上、スルホグリコシダーゼの腸内細菌における生理機能を初めて解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MALDI-TOF-MSを用いたムチン糖鎖の構造解析および半定量技術を確立するために少なからず時間がかかったが、その解析結果は論文投稿時のレフェリーに高く評価され、今後の申請者グループの研究のフレームワークを支える土台となった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、硫酸化糖鎖に作用する腸内細菌酵素の解析を進める。特に、糖質加水分解酵素ファミリ136 (GH136)に着目した研究を行う。具体的には、GH136のX線結晶構造解析を行うと共に、alphafold2から予測された新規な糖質結合モジュール(CBM)の機能御解析を行う。また、前年度までの研究で明らかとなったH抗原に特異的に結合する新規なアミノ酸配列を有するCBMドメイン(1,2-alpha-L-フコシダーゼのN末端に存在する)について構造解析および生理機能解析を行う。具体的には本ドメインを欠失させたコンストラクトを作製し、ムチン糖鎖等のフコシル化糖鎖を有する糖タンパク質に作用させて、当該ドメインの機能を調べる。さらに、母乳オリゴ糖トランスポーター(ラクト-N-テトラオーストランスポーター)のインフォマティクス解析を行う。本トランスポーターは、その基質結合ドメインの一部の配列がホモログ間で異なり、それが基質特異性に影響を及ぼしていることが明らかとなっている。この領域について次世代シーケンサーを用いてバリアント解析を行う。すなわち、授乳中、離乳中、離乳後において、どのようなバリアントが濃縮されているかについて解析する。本解析は、公共データベースにあるメタゲノムデータも使用して行う。また、ラクト-N-テトラオーストランスポーター以外に、シアリル化母乳オリゴ糖トランスポーターの構造解析も行う。シアリル化母乳オリゴ糖トランスポーターは本申請課題において初めて同定されており、その基質認識機構を構造レベルで解明することは、数年度に開始される本オリゴ糖の産業利用の科学的基盤を支える上で重要である。以上の解析結果を統合すると同時に、乳児糞便中のオリゴ糖や成人糞便中のムチン糖鎖の解析を行い、上記酵素およびそのバリアントが腸内細菌叢形成に果たす役割を推察する。
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Research Products
(11 results)