2021 Fiscal Year Annual Research Report
スフィンゴ脂質代謝異常下で細胞救済に寄与するシグナリング機構の解明
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21H02118
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 元洋 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20452740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 洋平 九州大学, 農学研究院, 助教 (90572868)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 複合スフィンゴ脂質 / セラミド / 出芽酵母 / 救済機構 / シグナル伝達系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はスフィンゴ脂質代謝異常下で救済に寄与する機構に関して、以下の成果を得た。 (1) 複合スフィンゴ脂質代謝破綻下でのPKAによるHOG経路の制御。これまでにHOG経路が活性化が、複合スフィンゴ脂質生合成抑制による生育損傷を緩和することを見出していた。本年度は、プロテインキナーゼA (PKA)がHOG1のリン酸化の抑制、HOG経路下流の転写応答を抑制することで、HOG経路の適正な活性制御が行われていることを示した。また、PKAの活性化は、HOG経路非依存的な経路で複合スフィンゴ脂質代謝破綻下における生育損傷を促進することも併せて見出し、これらの成果を論文発表した。 (2) ジヒドロスフィンゴシン過剰蓄積による細胞死からの救済。これまでに、複合スフィンゴ脂質の合成中間産物であるジヒドロスフィンゴシン (DHS)が蓄積すると細胞死が起きることを見出していた。本年度は、DHSに対して抵抗性を付与するサプレッサー変異の探索を行い、ミトコンドリアレトログレードシグナル伝達経路 (RTG経路)の転写因子であるRtg3を同定した。RTG経路の欠失は、DHSによるミトコンドリア由来の活性酸素種の異常蓄積と細胞死を抑制した。さらにDHS蓄積によってRTG経路が活性化されることも見出した。これらのことより、DHSの細胞死誘導にはRTG経路が関与しており、その欠損がDHS過剰蓄積からの救済に繋がることが示され、本成果を論文発表した。 (3) 複合スフィンゴ脂質構造多様性破綻酵母における救済機構。これまでに、複合スフィンゴ脂質が一種類だけになった変異酵母が、多面的な環境ストレス感受性を示すことを見出していた。本年度は、転写因子Msn2/4およびMAPキナーゼSlt2が、本酵母変異株で生じる形質膜、細胞壁の異常をそれぞれ補填し、ストレス高感受性を緩和していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複合スフィンゴ脂質代謝破綻に対する救済機構であるHOG経路に関しては、PKAを介した制御機構に関する研究がFEBS Journalに掲載され、研究は概ね順調に進行している。また複合スフィンゴ脂質代謝異常下でのリスクファクターとなるDHSに関しても、その細胞死誘導機構の一端を明らかにすることができた。一方で、複合スフィンゴ脂質の構造多様性破綻による細胞機能異常発現に関しても、形質膜と細胞壁のインテグリティーの損傷が異常発現の原因となることを突きとめ、その救済機構も明らかにすることができた。本成果に関しては現在論文を投稿中である。以上のことから、本研究課題の進捗状況は概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
HOG経路とは別に存在する複合スフィンゴ脂質代謝破綻に対する救済機構の解明も現在進行させており、すでに有望な遺伝子を複数同定している。また、複合スフィンゴ脂質の構造多様性破綻によるストレス高感受性を抑制する変異遺伝子も新たに同定しており、これらの詳細な解析が急務となっている。また、複合スフィンゴ脂質の前駆体であるセラミドの異常蓄積による細胞死誘導に関しても、HOG経路とは別のMAPキナーゼ経路がその救済に寄与することを見出しており、最終標的因子の同定も含めて詳細な解析を進めていく予定である。本研究課題の中で特に重要な位置をしめているHOG経路の救済メカニズムに関しては、複合スフィンゴ脂質代謝破綻による酸化ストレス増大との関連性に着目し、重点的に解析を進めていく。
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