2022 Fiscal Year Annual Research Report
Construct of the platform for developing antibiotics targeting Vibrio cholera NADH-ubiquinone oxidoreductase
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21H02130
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三芳 秀人 京都大学, 農学研究科, 教授 (20190829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸川 淳一 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (80599241)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コレラ菌呼吸鎖酵素 / NADH脱水素酵素 / ユビキノン / 抗菌剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
コレラ菌NQRの精密構造を明らかにするために、大腸菌に発現させたNQRを精製し、cryo-EM(Titan-Krios)による単粒子解析を令和3年度から実施してきた。その結果、阻害剤が結合していない酸化型NQRの構造を3.1オングストローム分解能でモデル化することに成功した。さらに、コレラ菌NQRの特異的阻害剤であるコロルミシンおよびオーラシンD-42がNqrBサブユニットに結合した状態の構造を2.7オングストローム分解能でモデル化することにも成功した。 cryo-EMで明らかにしたNQRの構造は、2014年にSteuberらが発表したX-線結晶構造と極めて類似していたが、X-線結晶構造では解けていなかった多くの部分構造を全てモデル化できた。X-線結晶構造で鉄原子と帰属されていたNqrD/Eサブユニットに結合したcofactorは、1個の2Fe-2Sクラスターであることがわかった。また、X-線結晶構造で帰属したリボフラビンの位置は間違っており、NqrBサブユニットの中央部分に位置することを明らかにした。重要なことに、阻害剤が結合するNqrBサブユニットのN-末端領域は阻害剤が存在しない時にはランダムな構造を取って密度が認められないが、阻害剤が結合すると固定化されるためモデル化できた。 さらに、先行研究の阻害剤の光親和性標識における拮抗試験において、不思議な結果が得られていた。すなわち、拮抗剤が存在すると標識率が増大するという現象である。阻害剤結合部位がダイナミックに構造変化することを考慮し、異なる阻害剤親和性を持つ2種類の結合部位が存在するという平衡論モデルを立てることで、この不思議な現象を説明することができた。以上の成果を論文化し、Nat. Commun. (2022, 4082)誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Cryo-EMよるNQRの構造解析が当初の予想よりも順調に進展した。特に2種類の阻害剤の結合型構造がモデル化できたことは、抗菌剤の分子設計戦略の基盤を構築するためには重要な成果であり、本研究課題全般の大きな推進力になるものと期待している。しかし、依然として酸化型NQRの構造しか解析できておらず、還元型など他の触媒サイクル上の構造を解明する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
NQRの反応メカニズムを完全に理解するためには、今回の酸化型構造だけでは不十分であるため、今後は還元型NQRの構造など他の異なる中間体構造の解析に取り組む。その1つとして、ユビキノン分子が結合した状態の構造解析に取り組み、ユビキノンの結合部位を確定することが喫緊の課題である。そのために、ユビキノン結合部位と予想される領域に変異を導入し、野生型酵素とは結合親和性の異なる変異酵素を準備することも有効かもしれない。 さらに、ユビキノン側鎖に光分解性基を導入したユビキノンプローブを分子設計し、光親和性標識法によってユビキノン側鎖部の結合領域を同定することを計画する。また、in vivoでの抗菌活性の大幅な向上を志向したコロルミシンの構造展開も着実に進める。
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Remarks |
京都大学HP(最新の研究成果を知る)から
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