2021 Fiscal Year Annual Research Report
IgA産生を増強するリン酸化ペプチド情報に基づく革新的アレルギー治療法の開発
Project/Area Number |
21H02137
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
片山 茂 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (30443922)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 里絵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (10399371)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ソバアレルギー / リン酸修飾 / ペプチド / IgA / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
アレルギーの治療法として経口減感作療法が挙げられるが、重篤な副反応の誘発リスクが高く、標準的治療法とは成り得ていない。そこで本研究は、アレルゲンタンパク質のリン酸修飾体から得たリン酸化ペプチドによってIgA抗体の産生が増強され、IgAによる腸管免疫力の増強を介してアレルギー症状が軽減されることを証明することを目的とした。これらの基礎的知見を蓄積し、食品由来リン酸化ペプチドの情報に基づく革新的食物アレルギー治療法の開発を目指す。当該年度はリン酸修飾Fag e 2のリン酸修飾部位の特定と樹状細胞におけるシグナル伝達経路の解明に取り組んだ。リン酸修飾Fag e 2のリン酸修飾部位の同定に成功し、修飾されるアミノ酸はセリン、チロシン、トレオニンであることを明らかにした。リン酸修飾部位は特定の箇所に集中しておらず、Fag e 2のアミノ酸配列に全体に分布していたことから、線状エピトープは効果的にマスキングされるものと推測した。なお、高次構造エピトープはリン酸修飾の影響を受けなかったが、リン酸修飾は消化抵抗性を低下し、リン酸修飾Fag e 2のペプシン消化物は高次構造エピトープを喪失させることが示された。すなわち、リン酸修飾Fag e 2は経口摂取後、低アレルギー性ペプチドとして作用することが示唆された。骨髄由来樹状細胞を用いた試験の結果、リン酸修飾Fag e 2の添加によりIL-12p70、IL-6およびTGF-betaの産生促進が認められた。TLR9阻害剤の添加により、IL-12p70とIL-6の産生量は低下した。一方、TGF-betaの産生量はTLR9阻害剤の影響を受けなかった。以上より、リン酸修飾Fag e 2は樹状細胞のTLR9により認識され、Th1型サイトカインであるIL-12p70およびIgA産生関連サイトカインであるIL-6の産生を促進させることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、リン酸修飾Fag e 2のトリプシン消化物を用いてリン酸修飾部位を同定することに成功した。得られた結果は、リン酸修飾による線状エピトープのマスキング効果を支持するものであった。高次構造エピトープはリン酸修飾の影響を受けなかったが、リン酸修飾は消化抵抗性を低下し、リン酸修飾Fag e 2のペプシン消化物は高次構造エピトープを喪失させることが示された。すなわち、リン酸修飾Fag e 2は経口摂取後、低アレルギー性ペプチドとして作用することが示唆された。樹状細胞はマウス腸管パイエル板からセルソーターで分離することを予定していたが、実験に必要な数を確保できなかったため、マウス骨髄細胞から分化した樹状細胞を使用した。骨髄由来樹状細胞を用いた試験の結果、リン酸修飾Fag e 2の添加によりIL-12p70、IL-6およびTGF-betaの産生促進が認められた。TLR9阻害剤の添加により、IL-12p70とIL-6の産生量は低下した。一方、TGF-betaの産生量はTLR9阻害剤の影響を受けなかった。以上より、リン酸修飾Fag e 2は樹状細胞のTLR9により認識され、IgA産生関連サイトカインであるIL-6の産生を促進させることが示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度得られたリン酸修飾部位の情報をもとにリン酸化ペプチドを合成する。ソバアレルギーマウスの腸管膜リンパ節やパイエル板から採取した腸管免疫細胞群(T細胞やB細胞を含む)に、Fag e 2刺激下で候補ペプチドを処理し、IgE産生低下作用とIgA産生増強作用を評価する。高い効果が得られたペプチドに関しては、Fag e 2を感作させたソバアレルギーマウスに8週間経口投与し、血中ヒスタミンおよびFag e 2特異的IgEの測定により、アレルギー症状抑制作用を検討する。さらに、腸管免疫細胞群でのFag e 2特異的IgA産生増強作用を明らかにし、リン酸修飾の効果を評価する。
|