2021 Fiscal Year Annual Research Report
Can the improvement of intestinal abnormalities in lipid metabolism cause the improvement of fatty liver and obesity?
Project/Area Number |
21H02146
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
高橋 信之 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (50370135)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 食後高脂血症 / 肥満 / 脂質代謝 / 高脂肪食 / 消化管 |
Outline of Annual Research Achievements |
食後高脂血症の悪化は、動脈硬化性疾患発症リスクを高めることが明らかとなっており、本研究では、その悪化メカニズムの解明と食後高脂血症と肥満や脂肪肝との関連性、ならびに食品成分による食後高脂血症悪化の回線を検討している。 本研究の最大の課題は、食後高脂血症の悪化が、動脈硬化性疾患の発症リスクを高めるだけでなく、脂肪肝や肥満といった生体内での脂肪蓄積増加に寄与しうるかどうかという点である。これまでの研究成果から、腸管上皮細胞での脂肪酸酸化を亢進させることで食後高脂血症悪化が改善することが明らかとなっているため、食後高脂血症の脂肪肝・肥満への影響を検討するためには、小腸上皮細胞での脂肪酸酸化だけを亢進させたり阻害したりする必要がある。そこで現在、腸管上皮細胞での脂肪酸酸化をコントロールするペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)やAMP依存的タンパク質リン酸化酵素(AMPK)を腸管上皮細胞特異的にノックアウトして失活させたり、常に活性化されている変異体(DA体)を遺伝子導入して活性化したりした遺伝子改変マウスを作製している。 一方、もう一つの課題として、高脂肪食摂取で食後高脂血症が悪化することを明らかにしているが、どのようなメカニズムで悪化しているのかという点である。炎症反応を誘導するLPSが高脂肪食摂取により血中で増加することが分かったため、LPSが腸管上皮での炎症を誘導して、その炎症が食後高脂血症悪化に関わっているのではないかという仮説を立て、実験を進めている。今年度は、実際に高脂肪食摂取により血中LPS濃度が上昇し、そのとき腸管上皮組織において炎症時に発現が増加する炎症マーカー遺伝子の発現が増加していることを確認した。今後、LPSの受容体であるTLR4をノックアウトしたマウスで、高脂肪食摂取による腸管上皮組織での炎症と食後高脂血症を評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は「食後高脂血症の長期的影響の検討」および「食後高脂血症変化の分子メカニズムの解明」という2つの目的からなる。 「食後高脂血症の長期的影響の検討」については、PPARαもしくはAMPKを腸管上皮細胞特異的にノックアウト(KO)したマウスを作製するため、それぞれの遺伝子をloxP配列で挟んだfloxマウスおよびloxPで挟まれた領域を切り出すDNA組み替え酵素Creを腸管上皮細胞特異的に発現させたトランスジェニック(Tg)マウスを購入した。現在、floxマウスとCre-Tgマウスを交配させ、腸管上皮特異的KOマウスを準備している。一方、腸管上皮細胞特異的Dominant Active(DA)体Tgマウスの作製については、PPARαやAMPKそれぞれのDA体を、腸管上皮特異的発現調節領域であるVillinプロモータを持つ発現ベクターに組み替えしているが、Tgマウスを作製には至っていない。 「食後高脂血症変化の分子メカニズムの解明」については、高脂肪食摂取により腸内細菌由来のLPSが血中に移行し、その血中濃度が上昇することで腸管上皮組織のTLR-4が活性化され、腸管炎症が起こるという作業仮説に基づいて、C57BL/6Jマウスに1週間、普通食もしくは高脂肪食を摂取させた場合の血中LPS濃度を測定した。その結果、高脂肪食接種群で血中LPS濃度の上昇が認められた。同じ条件で、高脂肪食摂取群で食後高脂血症が悪化し、腸管上皮組織の炎症マーカー遺伝子の発現が増加したことから、血中LPS濃度上昇と食後高脂血症悪化および腸管炎症には関連があることが示唆された。現在、上昇したLPSが腸管炎症を引き起こすかどうか明らかにするため、LPS受容体であるTLR4KOマウスを用いて同様の実験を計画している 加えて、抗炎症作用を持つ食品成分による食後高脂血症悪化の改善を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、PPARαとAMPKの腸管上皮細胞特異的KOマウス作製を試みる。ただし食後高脂血症の評価を行うために必要なマウスの引数を一度に用意することが困難であるため、複数回に分けて評価するか、業者に委託して体外受精により準備する必要があると思われる。そのため、腸管上皮細胞特異的KOマウスを用いた食後高脂血症の評価には時間がかかることが予想される。DA体Tgマウス作製については、ベクター作製時に用いるDNA断片が大きいため、ベクターの組み替えに時間がかかっており、計画の遅れが目立っている。こちらも引き続き、作業を進めていく。 一方で、TLR-4KOマウスは順調に交配ができており、マウスが準備でき次第、食後高脂血症の評価を行い、血中LPS濃度上昇と食後高脂血症・腸管炎症との関連を検討する。 食品成分については、PPARαもAMPKも活性化することができるレスベラトロールの食後高脂血症悪化に対する作用を検討しており、レスベラトロールを1週間摂取させた場合、PPARα活性化を介して食後高脂血症悪化が改善された。またレスベラトロールが単回経口投与された場合にもAMPK活性化を介して、食後高脂血症悪化を改善するかどうか検討を進める予定である(AMPKを活性化する合成アゴニストであるメトホルミンの単回投与により食後高脂血症悪化が改善されることは確認済みである)。引き続き、食品成分による食後高脂血症悪化改善作用とそのメカニズムについて実験を進めていく予定である。
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Research Products
(4 results)