2022 Fiscal Year Annual Research Report
細胞質雄性不稔性を温度感受性化する稔性回復遺伝子の育種学的研究
Project/Area Number |
21H02159
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久保 友彦 北海道大学, 農学研究院, 教授 (40261333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北崎 一義 北海道大学, 農学研究院, 助教 (60532463)
松平 洋明 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (90549247)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞質雄性不稔 / 稔性回復遺伝子 / 温度感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
(野外圃場試験)北海道礼文町と福岡県久留米市のそれぞれに同一遺伝子型のテンサイを移植し、花粉稔性を調査した。その結果、雄性不稔細胞質を持ち核遺伝子型が異なる個体は栽培地によって花粉稔性が大きく異ることが明らかになった。そのうちいくつかは礼文町では正常に近いが久留米市においては雄性不稔に近い表現型であった。一方、正常細胞質個体はこのような栽培地による花粉稔性変化を示さなかった。 (温度感受性の遺伝子型)温度感受性を示す個体が保持する稔性回復遺伝子(Rf)について遺伝解析を行うため、Rf1アレルの一つを単独で保持するような個体を作出した。その結果、このRf1アレル単独での花粉稔性回復能力は著しく低いことがわかった。一方、組織切片を作成したところ、内部構造が細胞質雄性不稔(CMS)個体とは異なっていることがわかった。このRf1が確かに稔性回復の作用を持つ証左である。このRf1を単独で保持する個体について葯の転写産物のデータを得た。正常やCMS個体とは異なることがわかった。 (新規Rfの単離)「先進ゲノム支援」のサポートを受け、新規Rf保持個体における当該遺伝子座乗領域を明らかにした。CMS個体の対応領域もあわせて明らかにし、両者の間には大きな構造変異があるゲノム領域であることがわかった。転写産物データを得ている。この領域にいかなる遺伝子があるのかは未だ明らかではないが、アメリカのテンサイ系統の当該領域(ただし日本のものとは構造が異なる上、遺伝子型がわからない)の遺伝子予測に基づき候補遺伝子を数個まで明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外圃場試験の表現型は高温で不稔になり涼温で正常という狙い通りのものにかなり近い。一方で、温度感受性に関わる遺伝子型が当初の想定よりも複雑であることがわかり、材料育成を見直せねばならない。これに関わる新規温度感受性Rfの単離については、「先進ゲノム支援」により進んでいる。分子的なメカニズムについては、実験準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、テンサイCMSを温度感受性化させるような核遺伝子型のモデルは、温度感受性化を担うが作用力が弱い主導的Rf(新規Rf)と、その作用力を高める修正遺伝子(特定のRf1対立遺伝子)と考えられる。このモデルを支持するデータを得る。そのため、遺伝解析を行う。分子的な解析については、新規Rfの単離をすすめる。これには遺伝分離集団の利用とともに、遺伝資源を活用する。葯のRNA-seqデータも活用しながらすすめる。一方、タンパク質相互作用という異なる側面からも進めていく。特にRf1は分子シャペロン様の活性を持つことがわかっているので、相互作用するパートナーの情報は重要であると考えている。
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