2021 Fiscal Year Annual Research Report
イネ子実の登熟に対するソース機能増強を目指した茎部蓄積デンプンの分解機構の解明
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21H02174
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
平野 達也 名城大学, 農学部, 教授 (30319313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒川 裕介 名城大学, 農学部, 助教 (60851798)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イネ / 茎部 / デンプン分解 / β-アミラーゼ / 染色体断片置換系統群 / 連鎖解析 / ソース機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネβ-アミラーゼ遺伝子、OsBAM2とOsBAM3のプロモーターとGUSレポーター遺伝子の発現コンストラクトを導入した形質転換イネを生育させ、GSU染色により両遺伝子の発現の組織特異性を解析した。その結果、OsBAM2は出穂期以降の葉鞘における葉肉細胞に加えて、側根が発生している部位や節における冠根発生帯でも発現が認められた。一方、OsBAM3は根端や葉鞘の葉沈部など重力を感知する部位および発芽種子の胚盤や葉鞘の維管束鞘細胞周辺で強く発現していた。さらに、OsBAM5のプロモーターとGUS遺伝子の発現コンストラクトを導入した形質転換体の作出を完了した。 β-アミラーゼ遺伝子の発現抑制により生じる表現型を解析するため、OsBAM3とOsBAM5の二重発現抑制系統(品種:日本晴)の育成を進め、20系統ほどのT1種子を採種した。また、タカナリを原品種としたOsBAM2とOsBAM3の二重発現抑制系統ならびにOsBAM5の発現抑制系統を育成し、それぞれ10および20系統ほどのT1種子を採種した。これらについては2022年度以降に表現型の解析を進める予定である。 コシヒカリとIR64の間で作出されたコシヒカリをベースとした染色体断片置換系統群のうち、SL2020とSL2021はIR64と同様に出穂後の葉鞘におけるデンプン含量の低下が早い。そこで、その現象に関わる遺伝子の同定に必要な連鎖解析を行うための系統育成を進め、SL2021に対してコシヒカリを戻し交雑したF1系統を栽培し、そのF2系統の種子を得た。また、SL2020に対してコシヒカリを戻し交雑し、F1種子を多数得ることができた。さらに、それら育成した系統での連鎖解析を行うための分子マーカーの整備も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
β-アミラーゼ遺伝子、OsBAM2とOsBAM3の発現に関する組織特異性を解析するための実験は当初の計画通りに実施することができ、OsBAM2とOsBAM3の機能の違いを考察することができる興味深いデータを得ることができた。また、OsBAM5プロモーターとGUS遺伝子の発現コンストラクトを導入した形質転換イネの作出も順調に進めることができ、2022年度には予定どおりそれを使ったOsBAM5発現の組織特異性に関する解析を予定している。さらに、日本晴とタカナリそれぞれを原品種とした各β-アミラーゼ遺伝子の発現抑制系統もほぼ予定どおりT1系統の種子の採種までが終わったことから、引き続きT1系統を栽培し、RNAi効果の確認を行って、T2の採種を行う予定である。 一方、出穂後の葉鞘におけるデンプン分解において重要な役割を担っているα-アミラーゼアイソジーンのひとつRAmy2Aの発現抑制系統において、葉身の光合成に及ぼす影響を本年度中に解析する予定であったが、実行することができなった。よって、この実験は2022年度に実施したいと考えている。 コシヒカリとIR64の間で作出されたコシヒカリをベースとした染色体断片置換系統群のうち、出穂後の葉鞘におけるデンプン含量の低下が早いSL2020とSL2021を用いた連鎖解析のための材料作りは順調に進んでいる。また、有効なDNAマーカーも整備することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
出穂後の葉鞘において発現が多いOsBAM2、OsBAM3およびOsBAM5の3つのβ-アミラーゼ遺伝子それぞれのプロモーター領域とGUSレポーター遺伝子をつなげた発現コンストラクトを導入した形質転換イネを生育させ、適切な時期に葉鞘や節間、葉身などの器官を採取し、GUS染色を行う。その後、マイクロスライサーにより横断切片を作成して、昨年度よりも詳細な発現の特性を解析する。また、これらβ-アミラーゼアイソジーンの発現に関わる誘導因子を同定するため、糖飢餓状態のイネ植物体から葉切片を作成し、糖および様々な植物ホルモンの添加による各遺伝子の発現を詳細に解析する。以上の結果から、OsBAM2、OsBAM3およびOsBAM5の機能の違いを考察する。 超多収イネ品種タカナリではα-アミラーゼ遺伝子のRAmy2Aが出穂後の葉鞘におけるデンプン分解に重要な役割を担っている。一方、タカナリにおいて上記β-アミラーゼ遺伝子が葉鞘のデンプン分解にどの程度貢献しているかを明らかにすることで、葉鞘のデンプン分解におけるα-アミラーゼとβ-アミラーゼの機能分担および日本型品種とインド型品種間のデンプン分解過程の違いの解明につながるかもしれない。そのための材料作りがほぼ完了していることから、2022年度以降はそれら系統を用いた解析を進める。 順遺伝学的な手法により葉鞘のデンプン分解を制御する因子の同定を進めるため、コシヒカリ/IR64//コシヒカリ染色体断片置換系統群による解析を進めている。今年度までにSL2021とコシヒカリ間で戻し交雑を行ったF2系統、およびSL2020とコシヒカリ間で戻し交雑を行ったF1系統の種子を得ることができた。さらに、連鎖解析を行うためのDNAマーカーも整備することができた。よって、今後はそれらを活用し、量的遺伝子座の同定、さらには遺伝子マッピングへと研究を進展させる。
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