2023 Fiscal Year Annual Research Report
ニンニクウイルスOYDVがLYSVにアブラムシ伝搬を依存する分子メカニズムの解明
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21H02190
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
増田 税 北海道大学, 農学研究院, 教授 (60281854)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポティウイルス / HC-Pro / アブラムシ伝搬 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポティウイルスのHC-Proは、アブラムシの口針にあるタンパク質(StylinやPRI)と結合できる他、ウイルスのコートタンパク質とも結合する。ニンニクには2つのポティウイルス、タマネギ萎縮ウイルス(OYDV)とリーキ黄色条斑ウイルス(LYSV)が混合感染して検出される。中国産や北海道産のOYDVはHC-Proのアブラムシ伝搬に重要なアミノ酸配列に長い欠損があるため、OYDVのアブラムシ伝搬は、LYSVのHC-Proに依存しているものと推定された。以前の研究で、短いHC-Proは、StylinやPRIと結合できないことをin vitroの結合試験で証明している。この短いHC-ProはRNA silencing suppressor (RSS)活性を喪失していない。しかも、中国産のHC-Proは長いHC-Proよりも高いRSS活性を有していた。HC-ProのRSS活性はウイルスの宿主適応に極めて重要である。ここで、我々は、OYDVがLYSVにアブラムシ伝搬を依存する現象は、OYDVの拡散・進化に本質的なことではないと考えた。そこで、バイオインフォマティクスとラボ実験を融合・駆使した研究手法をとりいれ解析した結果、ポティウイルスの拡散・宿主適応進化について明瞭な仮説を提唱することができた。すなわち、LYSVは進化の過程でP1タンパク質に生じた欠失によって、RSS活性を獲得し、HC-ProのRSS活性を強化することができたと考えた。この欠損P1をもつLYSVは、強化されたRSS活性によって宿主範囲を拡大させ、日本で優占種になったものと推定される。OYDVはLYSVのRSS活性を巧みに利用できたのではないか。あるいは、両ウイルスのHC-ProのRSS活性は相乗効果を発揮できた可能性すら考えられる。OYDVにとってアブラムシ伝搬能を喪失したことは、進化にむしろ有利に働いたと結論した。
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Research Progress Status |
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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