2022 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原糸状菌の寄生性を規定するクロマチン状態の解明
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21H02195
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中屋敷 均 神戸大学, 農学研究科, 教授 (50252804)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | いもち病菌 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
いもち病菌は栄養条件が良ければ腐生的に生活することが可能であり、また植物病原菌として寄生的に生きることも可能である。本研究では、このいもち病菌の「寄生」と「腐生」という生理的に異なった二つのモードをスイッチングする重要な機構として、エピジェネティックなクロマチンの状態に注目している。昨年度は各種のヒストン修飾のうち「寄生的」な状態を規定するものはどれか探索することを行ったが、本年度はその中でもH3K4me2とH3K27me3による制御に注目して研究を進めた。 感染葉におけるChIP-seqやHi-C解析を昨年取り組んだが、技術的に難しいことが判明したため、本年度はそれを培養条件を工夫してそれを模した状態を作ることを試みた。寄生的な条件は貧栄養状態であり、植物由来の成分に接することから、最少培地に植物抽出液を加えたMinPS培地を考案した。この培地で培養した菌糸のRNA-seqを行った所、感染葉で特異的に発現している遺伝子の約45%が発現誘導されており、近年注目されているエフェクター様遺伝子に限れば、その50%以上が誘導されていた。 これらのRNA-seq解析の結果は、MinPS培地により細胞の状態は「寄生モード」に近づいていいることが判明したため、これを用いてまずChIP-seq解析を行った。その結果、Min-PS培地では「腐生モード」で遺伝子発現が活発なコア染色体でH3K27me3のレベルが上昇しており、エフェクターなどが多く座乗するサブテロメアなどの条件的ヘテロクロマチン領域でH3K27me3が減少するという傾向があることが判明した。この変化は、数十万~百万塩基対といった染色体の領域を単位として変化しており、グルーバルなヒストン修飾の変化が「腐生」と「寄生」を規定している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いもち病菌の「寄生モード」を模倣することができるMinPS培地を見出し、研究を進展させる目処をつけることができた。また、この系を用いた「寄生」と「腐生」モードの規定にH3K27me3が重要な役割を果たしていることを示唆する結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度構築された系を用いた他のヒストン修飾の動向やHi-C解析によるより高度なクロマチン状態の変化についても検討を行いたい。
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