2021 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring ecosystem management that simultaneously enhances pollination, pest control, and endangered species conservation in agricultural landscapes
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21H02214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 直 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50182019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝 久智 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80598730)
横井 智之 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80648890)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 絶滅危惧種 / メタ個体群 / 攪乱 / 草原 / 送粉サービス / 間接効果 / 相補性効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
①ミヤマシジミの局所個体群動態に与える草刈りタイミングと強度の効果 本年度は、過去4年間に及ぶ絶滅危惧種ミヤマシジミの生息地管理実験を通して本種の最適な撹乱レジームを明らかとし、更に、その攪乱レジームが生息地パッチの質(共生アリや植生)に与える影響を評価することを目的とした。ミヤマシジミの局所個体群増加率は対照区と比べ実験区で有意に高く、実験区の中でも10㎝高刈区で最大となった。また、草刈りのタイミングについては、草を刈った直後の増加率が最も高く、その後刈らずに置いておくと増加率が減少していく傾向が見られた。撹乱直後に成虫が産卵することで幼虫が増加することを示唆していると考えられる。また、連結性が高い生息地や、共生アリが多い生息地、食草の被度が高い生息地では増加率が高いことも示された。実験によって共生アリの個体数に変化は見られなかったが、10㎝高刈区で食草の被度と草原性植物の種数が有意に増加した。 ② 畦畔管理とソバの送粉サービス これまでの研究成果から、ソバの栽培期間中に畦畔での草刈りを控えることで送粉者個体数や結実率が3割ほど増加することが明らかとなってきた。だが送粉者個体数が増加するメカニズムや送粉サービス向上に効果的な植物種は不明であった。そこで本年度は、畦畔の野生植物がもつ送粉者の花資源と夜間の休息場所としての役割に着目し、送粉者を介した野生植物からソバへの間接効果を明らかにすることを目的とした。 栄養(採餌)ネットワークでは、少なくとも46種の昆虫が16種の野生植物に訪花していた。非栄養(休息)ネットワークでは、少なくとも56種の昆虫が48種の植物の葉や茎、花の上で休息していた。これらの結果は、多様な野生植物は、栄養・非栄養プロセスを介して相補的にソバの送粉サービスを高めることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに、絶滅危惧種の保全と送粉サービスの向上の両立を可能にする農地周辺の草地管理についての様々な知見を得ており、極めて順調である。単なる観察だけでなく、野外における草刈り管理の操作実験も交えた研究成果は、因果関係の立証や再現性の面で非常に説得力のある内容となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
字数制限により「研究概要」で記すことはできなかったが、現在、様々な研究課題を進めている。具体的には、①ミヤマシジミと共生アリ・寄生ハエ・センチュウとの相互作用に関するもの、②4か所の林縁伐採を行い開放環境を創出し、その後のソバ畑への送粉昆虫の増加などを調べるもの、③気象変動に対する訪花者の応答をもとに多様性と送粉サービスの関係性を明らかにするもの、などである。次年度以降に成果が期待される。
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Research Products
(8 results)