2021 Fiscal Year Annual Research Report
Error avoidance strategy of Platypus quercivorus on their host selection process
Project/Area Number |
21H02234
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 理正 京都大学, 農学研究科, 助教 (80263135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 康人 兵庫県立農林水産技術総合センター, 森林林業技術センター, 研究員 (70510923)
岡田 龍一 神戸大学, 理学研究科, 学術研究員 (20423006)
池野 英利 福知山公立大学, 情報学部, 教授 (80176114)
森 直樹 京都大学, 農学研究科, 教授 (30293913)
西岡 正恵 (石原正恵) 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (90594367)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カシノナガキクイムシ / ナラ枯れ / 寄主選択 / 樹冠 / 一次誘引 / フライトミル |
Outline of Annual Research Achievements |
神戸市立森林植物園にて、コナラなどの寄主樹種と、ソヨゴなどの非寄主樹種に粘着トラップを設置し、カシノナガキクイムシの着地数を調べた。樹冠投影図から算出した寄主樹種の樹冠密度、周囲の寄主樹種への着地数・非寄主樹種の太さを説明変数としたモデルを構築し、非寄主樹種への着地に影響している要因を探索した。その結果、着地確率には直上の寄主樹種の樹冠密度が、着地数には非寄主樹種の太さが影響を与えていることが明らかとなり、カシノナガキクイムシが飛来の段階では樹冠の情報を利用していること、着地の段階では木の太さを認識していることが示唆された。また、周囲の寄主樹種への着地数は、着地確率と着地数の両方に影響を及ぼしており、寄主樹種への飛来着地が多くなる時期に周囲の非寄主樹種への誤った飛来着地が起こっていることが示唆された。 フライトミルを用いてカシノナガキクイムシを実験室内で飛翔させ、飛翔距離に影響する要因を調べた。その結果、飛翔距離は個体によって0.18~29.17kmと大きくばらつくが、体重にみられる性差が初期飛翔速度と飛翔時間に影響を及ぼし、最終的に飛翔距離のばらつきを生み出していることが示唆された。 兵庫県宍粟市にて、一次誘引の候補物質を用いたカシノナガキクイムシの誘引試験を行った。トラップは、塩ビ管を継いだ6mの支柱の先端にイソプレンを浸ませた除湿シートを張り、基部にエタノール蒸散剤とカシナガコールを設置し粘着トラップを取り付けたものとした。イソプレンの有無、エタノールの有無で計4本のトラップを立て、3日から10日間隔で5回、設置と回収を繰り返した。その結果、イソプレンとエタノール設置区で計3頭、イソプレンのみの区で1頭、エタノールのみの区で1頭、対照区で1頭の捕獲があった。捕獲頭数が少なく、イソプレンの効果は確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目的として掲げている項目のうち「着地に関与する要因の解明」について、野外調査によって目的を達成することができた。得られた結果から、カシノナガキクイムシが飛来の段階では樹冠の情報を利用していること、着地の段階では木の太さを認識していることが示唆され、対象昆虫の寄主選択時の生態を考察する上で重要な成果となった。 「飛来に影響する物質の特定」については、その前段階としてフライトミルを用いた実験を行い、飛翔距離に及ぼす要因を明らかにすることができた。他種のキクイムシを用いた過去の同様の実験では一貫した結果が得られていなかったが、今回の結果でそれらも含めてキクイムシの飛翔に及ぼす影響を統一的に理解可能となった。 「防除資材の開発」に関しては十分な成果が得られなかったが、トラップの構造や一次誘引物質の設置方法など改善の余地があるので、今後も継続して行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
着地に関与する要因を調べる過程で、樹冠の上からアプローチし樹冠を通り抜けて寄主木の地際部に到達するという、カシノナガキクイムシの寄主へのアプローチ経路が示唆された。これを確かめるために、寄主の樹冠内に複数の衝突板トラップを設置し、アプローチ経路の特定を試みる。 飛来に影響する物質の特定に関して、候補物質に対する触角の電気応答試験を行う。候補物質に対する飛翔中の反応を見るために、フライトミルの構造の改良を行う。 防除資材の開発に向けて、トラップの構造については、6mの支柱を立てる方法の簡易化を図る。揮発が早い物質の設置方法について、活性炭シートなど除湿シート以外の素材を検討する。
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