2021 Fiscal Year Annual Research Report
マングローブ呼吸根の通気組織を介したガス輸送は低窒素環境への適応なのか?
Project/Area Number |
21H02239
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
井上 智美 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主幹研究員 (80435578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下野 綾子 東邦大学, 理学部, 准教授 (30401194)
高津 文人 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 室長 (30514327)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マングローブ / 通気組織 / 窒素固定 / 植物バクテリア相利共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは以前の研究課題により、マングローブ植物ヤエヤマヒルギの地上部に露出した支柱根の通気組織を通じたガス輸送によって大気中の窒素ガスが土中の根近傍に潜む窒素固定バクテリアに供給されており、根近傍で高い窒素固定活性が維持されていることを明らかにした。本研究では、野外環境におけるヤエヤマヒルギの通気組織を介した窒素固定速度と生育土壌の可給態窒素濃度との関係を明らかにする。さらに、根圏の可給態窒素量が通気組織の発達の規定因子となっているかどうかを栽培実験によって確かめることを目的としている。 2021年度は、栽培実験による検証を行った。沖縄県西表島で採取したヤエヤマヒルギの散布体を、(i)低窒素+好気(ii) 高窒素+好気 (iii)高窒素+嫌気の3つの条件下で栽培し、根の空隙率を測定した。嫌気環境下(条件iii)では、根の基部と先端の双方の空隙率が増加しており、ガスコンダクタンスを上昇させていることが推察された。このような反応は、他の湿地植物でも多くの報告があり、嫌気環境下への適応的な形質であると考えられる。低窒素下(条件i)での根の空隙率は、基部では条件(ii)と同程度で低いままであったが、先端では条件(iii)と同程度にまで増加していた。この結果は、ヤエヤマヒルギの根の通気組織誘導が低酸素だけではなく低窒素でも起きていることを示している。 野外調査については、沖縄県西表島のマングローブ林において調査木を決めるため、複数個体のヤエヤマヒルギの根圏の窒素と酸素濃度を、潮汐により変動する水深と塩分濃度と共に計測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの影響で野外調査の進捗が遅れることを見越して、栽培実験を先立って進め、嫌気環境だけではなく、低窒素環境下で通気組織の発達が誘導されることを示す結果を得た。野外調査については、やや遅れながらも、調査木の選定のための環境測定を行うことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
栽培実験結果の解析を進めると共に、追加栽培実験を行う。また、野外調査により通気組織と窒素環境との関係を明らかにするデータを取得する。
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Research Products
(10 results)