2023 Fiscal Year Annual Research Report
マングローブ呼吸根の通気組織を介したガス輸送は低窒素環境への適応なのか?
Project/Area Number |
21H02239
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
井上 智美 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主幹研究員 (80435578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下野 綾子 東邦大学, 理学部, 准教授 (30401194)
高津 文人 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 室長 (30514327)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マングローブ / 通気組織 / 窒素固定 / 植物バクテリア相利共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、低窒素になりやすい干潟環境に生育しているマングローブ植物の窒素獲得機構に焦点をあてている。前年度までの研究では、ヒルギ科ヤエヤマヒルギの地上根である支柱根の通気組織を通じたガス拡散によって、大気中の窒素ガスが土中の根近傍に潜む窒素固定バクテリアに供給されており、根近傍で高い窒素固定活性が維持されていることが明らかとなった。また、栽培実験により、低窒素下で根の通気組織形成が誘導されることが明らかになったことから、窒素環境によって通気組織内のガスコンダクタンスが変化し、窒素供給が効率的に行われている可能性が示された。 2023年度は、ヒルギ科に属するヤエヤマヒルギとは独立に干潟に進出したとされている、クマツヅラ科ヒルギダマシを対象として検証実験を行った。ヒルギダマシの地上根は、ヤエヤマヒルギの支柱根とは異なる形状の筍根であるが、地上部に露出している点や、内部に通気組織が発達している点は共通している。沖縄県西表島のマングローブ林に群生するヒルギダマシの筍根にチャンバーを取り付け、安定同位体窒素を用いたトレーサー実験を行ったところ、ヤエヤマヒルギと同様に、大気→地上根通気組織→土中の根組織への流れが生じており、地下部に拡散した窒素ガスが、根の組織間隙や表皮近傍に存在する窒素固定バクテリアに固定されていることが明らかとなった。また、根の各組織の窒素ターンオーバーと通気組織を介した窒素供給速度に正の関係が見られたことから、通気組織由来の窒素供給が、ヒルギダマシの主要な窒素供給源であることが示唆された。 別々に干潟に進出したヒルギ科とクマツヅラ科のマングローブ植物に共通の現象が認められたことから、マングローブ植物に特徴的な地上根の形態は、窒素不足に陥りがちな干潟環境への適応的な形質である可能性が示された。得られた成果をNew Phytologist誌に投稿し、掲載された。
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Research Progress Status |
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(9 results)