2022 Fiscal Year Annual Research Report
Imaging analysis of diversity expression of three dimensional structure of cell wall in trees
Project/Area Number |
21H02253
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
船田 良 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20192734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶田 真也 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40323753)
半 智史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40627709)
渡邊 宇外 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (70337707)
堀川 祥生 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90637711)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 木質バイオマス / 樹木細胞壁 / 管状要素 / 細胞骨格 / セルロース / 細胞壁修飾構造 / 生体イメージング / リグニン |
Outline of Annual Research Achievements |
再生可能な資源である樹木が生産する木材など木質バイオマスの高度有効利用は、循環型社会を構築し、パリ協定の遵守などに貢献する。木材の高度有効利用のためには、材質特性を決定する二次木部細胞の分化過程、特に複雑な三次元構造を有する細胞壁壁層構造の制御機構を解明することが不可欠である。本研究では、厚い二次壁と有縁壁孔やせん孔など修飾構造を有し、道管要素や仮道管などの管状要素に構造が類似した二次木部様細胞を樹木の培養細胞から直接誘導する新規モデル系を開発した。特に、セルロースや表層微小管の局在などを生体イメージング技術を駆使して解析した。ポプラのカルスから誘導される管状要素の細胞壁構造の制御のため、培地の植物ホルモン条件を網羅的に検討したところ、オーキシンである2.4-DとサイトカイニンであるBAP添加が最も有効であり、カルス内に細胞全体の厚い二次壁や壁孔などを有する二次木部様管状要素が認められた。管状要素の中には、直径の大きなせん孔も認められたことから、ポプラカルスより道管要素と類似した細胞構造を有する細胞が直接誘導されたといえる。さらに、細胞壁構造を高分解能走査電子顕微鏡で解析したところ、単せん孔と階段せん孔が存在した。ポプラに関しては、分子生物学的知見が多いことから、細胞壁形成機構の解明に良いモデルになるといえる。一方、ドロノキにおいては、高濃度のブラシノステロイドが管状要素の誘導に効果的であることを明らかにした。本研究の成果から、樹木の培養細胞から直接誘導される管状要素の形態や構造を制御する際の植物ホルモンの有効性と樹種特有の最適条件が存在することを明らかにした。一方、ポプラ培養細胞の表層微小管を高分解能低温走査電子顕微鏡で解析したところ、表層微小管は束状に存在し、管状要素の分化に伴い配向が変化したことから、表層微小管が細胞壁構造のパターン形成を制御していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主目的は、樹木の未分化の培養細胞から形態や細胞壁構造が複雑で多様性を有する二次木部様細胞を直接誘導する新規モデル系を確立し、細胞壁3次元構造の多様性の発現機構を解析することである。現在までの研究により、ポプラ、トチノキ、ドロノキなど広葉樹、スギ、カヤ、イチョウ、トドマツなど裸子植物の培養細胞から、細胞全体に堆積した厚い二次壁や有縁壁孔、らせん肥厚など複雑な修飾構造を有する管状要素を安定的に誘導することに成功している。特に、ポプラやトチノキにおいては、細胞の両末端に大きなせん孔の形成を誘導することに成功した。また、高分解能低音走査電子顕教法、一次壁で構成され比較的柔らかい細胞壁を有する細胞と広葉樹引張あて材のゼラチン繊維や針葉樹圧縮あて材仮道管のように硬い細胞壁を有する細胞の断面をアートファクトなしにスムーズに切削できるBroad Ion Beam (BIB)法などイメージング技術を開発し、細胞骨格やセルロースミクロフィブリルなどの配向や局在をよりインタクトに観察できる手法を確立した。これまでに得られた成果は国内や海外の大学等で多く発表し、国際雑誌に論文として公表した。また、教科書の執筆(2023年に発行)も行い成果を広く公表していることから、順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
広葉樹や針葉樹など異なる樹木の培養細胞から、複雑な細胞壁構造を有する二次木部様細胞を高頻度で直接誘導する最適条件をさらに検討する。特に、モデル植物でありゲノム解析が進んでいるポプラの培養細胞から有縁壁厚やせん孔の形成の誘導に成功したので、複雑な細胞壁修飾構造の出現率を増加させる条件を確立する。一方、ポプラの培養細胞を用いて堆積中のセルロースミクロフィブリルの配向や局在を高分解走査電子顕微鏡法で観察し、二次木部様細胞に沈着するリグニンの局在については、リグニン前駆体のプローブを駆使した生体イメージング技術によりリグニン前駆体の細胞壁中での動的な沈着過程を可視化する。また、原形質膜中に存在するセルロース合成酵素、セルロース合成酵素から合成されたセルロースミクロフィブリル、表層微小管、微小管付随タンパク質の立体的配置を凍結技術を駆使して、高分解低音走査電子顕微鏡法で観察する。さらに、培養細胞において分化特異的に発現するセルロース合成関連遺伝子の経時的な変化の解析を進め、セルロースミクロフィブリルの堆積経過との関連性を明らかにする。以上の研究結果から、樹木細胞壁の複雑な三次元構造の多様性の発現機構を明らかにし、木材の細胞壁構造形成機構の新規モデル図を提唱する。得られる成果は、国内や国際学会等で発表するとともに、論文として広く公表する。
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Research Products
(20 results)