2022 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of niche cells for supporting colonization, proliferation, and differentiation of xenogenic donor germ cells in recipient gonads.
Project/Area Number |
21H02283
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
竹内 裕 金沢大学, 生命理工学系, 教授 (70418680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 功 金沢大学, 生命理工学系, 准教授 (30774757)
濱崎 将臣 長崎県総合水産試験場, 種苗量産技術開発センター, 主任研究員 (50506160)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生殖幹細胞 / X線照射 / 魚類 / 精巣 / 蛍光免疫染色 / GFP / Notch signaling |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ゼブラフィッシュおよびクサフグを用いて『宿主魚へのX線照射による生殖細胞の一時的除去と精原細胞移植法の開発』を行った。それぞれの魚にエックス線を照射することで、一時的に生殖細胞の生存・増殖・分化に障害を与え、生殖腺を矮小化させることができるようになった。これらの一時的不妊化個体に対して、トラフグ精巣より調整したドナー生殖細胞の移植実験を行い、ドナー細胞のX線照射精巣内での挙動を観察した。本研究では、宿主魚にX線照射を施すことで、生殖腺内の内在性生殖細胞を一過的に除去しドナー生殖細胞の生着を促すことを目的として技術開発を行った。オスの野生型成魚ゼブラフィッシュを用いて、無処理区、高水温飼育区、高水温飼育+X線照射区の3つの試験区を設定し、各試験区での精巣の発達および組織形態を解析した。高水温飼育期間は35℃で10日間、X線照射は1回で19 Gy(約20分)とし、その後、通常水温(28℃)で2週間飼育した個体を解析に用いた。X線照射後の斃死は無く、X線照射魚の生殖腺重量比(GSI)は、無処理区の32%、高水温飼育区の48%へと減少した。各処理後に通常飼育へ戻すことにより、高水温飼育のみの区ではGSIが回復傾向を示したのに対し、X線照射を行った区では回復が見られなかった。各試験区の精巣組織切片を観察した結果、高水温飼育により精細胞と精子が消失、X線照射により精原細胞および精母細胞が減少し、精小嚢内腔が空洞化する様子が明らかとなった。X線照射により宿主精巣内の内在性生殖細胞を一過的に除去し、ドナー生殖細胞の移植に適した環境を調整できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子組換えゼブラフィッシュの解析が順調に進んでおり、精巣や卵巣内で蛍光を発する細胞の同定およびライブイメージングが可能となった。ゼブラフィッシュのみならずクサフグにおいても、適量のX線照射を行うことで、精巣が一時的に縮小する現象を確認でき、今後の生殖幹細胞移植実験への応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の体制で継続して研究を実施する。 【生殖幹細胞を取り巻く微細環境(ニッチ)の可視化】 造血幹細胞移植研究のために作出された遺伝子組換えゼブラフィッシュ系統では、種々の遺伝子の転写制御領域によって発現制御された蛍光タンパク質が腎臓内のみならず生殖腺内でも発現している。生殖腺内のどの細胞種が蛍光標識されているのかは未知であるため、免疫組織化学染色で明らかにする。次に続く、生殖幹細胞移植実験で宿主として使用する“種々の生殖腺体細胞が蛍光標識されたゼブラフィッシュを継代飼育により量産する。 【X線照射したクサフグ生殖腺内へのドナー(トラフグ)生殖細胞の移植・追跡・ドナー由来の配偶子生産の確認】 移植前処理として当歳の3倍体クサフグにX線照射を行った後、内在性生殖細胞が除去されているかを組織学的に解析し、移植適期を決定する。トラフグ未成熟精巣を酵素処理により分散後、精原細胞を含む集団を蛍光標識し、3倍体クサフグの卵巣・精巣内へ移植する。蛍光観察およびトラフグ生殖細胞に特異的なプライマーを用いたRT-PCRにより移植後の生着率や配偶子形成開始率の比較を行う。免疫関連遺伝子(rag1等)の発現解析により、X線照射が宿主の細胞性免疫応答を抑制できているか、さらには、移植成功率の改善に寄与したかを調べる。配偶子の種判別PCR、検定交配試験によりドナー由来の機能的な配偶子が生産されたか否かを調べる。
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