2022 Fiscal Year Annual Research Report
水の安定同位体比を用いた水田農業が流域水循環に果たす役割の定量的評価
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21H02308
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
中桐 貴生 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (80301430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀野 治彦 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 教授 (30212202)
濱 武英 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30512008)
櫻井 伸治 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 講師 (30531032)
吉岡 有美 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (40753885)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水の酸素・水素同位体比 / 水田農業 / 流量観測 / 水質分析 / 水田還元水 / 流域水循環モデル / 解析雨量 |
Outline of Annual Research Achievements |
千種川および斐伊川において,当初の予定通り,ほぼ月1回の頻度で現地調査を行うことができ,解析に必要なデータ(水の酸素・水素安定同位体比,水温,pH,DO,EC,ORP,COD,TOC,TN,TP,主要イオン,12種の微量元素)を取得することができた。ただし,球磨川については,月単位での降水採取と水田地域における不定期な現地調査に留まった。また,千種川においては,現地調査時に5箇所の河川合流点において,合流前後における流量観測を行い,複数の水質項目を用いた検討を通じて,水の酸素・水素安定同位体比が実際の河川における流量比の推定に利用できることを明らかにした。さらに,今回得られたデータを用いて,河川流下過程における水の安定同位体比の変化特性から,河川水における水田還元水の割合の定量推定を行ったところ,その割合は計算を行ったどの流域・地点においても灌漑期に多く,非灌漑期に少なくなるという傾向が明確に現れ,また数値的にはこれまでに得られていた結果と矛盾しない結果となった。 昨年度までに千種川流域を対象に開発した流域水循環モデルに「解析雨量」が適用できるよう改良を行った。これまでのモデルでは,降雨量として,千種川流域近傍における4~5地点の雨量計データの重み付き平均値を与えていたが,解析雨量を用いて流域内における雨量の空間分布特性を調べたところ,対象流域の上流部と下流部では年降水量で600mm以上の違いがあることが明らかとなり,モデルによる流出計算に解析雨量を適用できるようにしたことで,各地点における河川流量の変動特性をより実態を反映した形で再現ないし推定できるようになることが期待された。また,千種川以外の流域でも適用できるよう汎用化を行うための整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,研究遂行において新型コロナウィルスによる影響をほとんど受けることがなく,また,卒業論文研究として貪欲的に取り組んでくれた学生達が当初の予定よりも研究を進展させてくれたおかげで,昨年度までの遅れをかなり挽回させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査については,最終年度となる次年度においても千種川,斐伊川,球磨川の3流域を対象に継続して実施し,データの蓄積を図るとともに,データの整理・解析を行っていく。 水の安定同位体比を用いた河川水における水田還元水の割合の定量評価に関し,河川流下過程における河川内での同位体比変化の影響について検討を行う必要性があることがわかったことから,これに関する追加実験の実施も予定している。 水田水管理を考慮した流域水循環モデルの開発については,水田用水の取水地点や水田からの排水の流出地点など,実際の対象河川における実態をより反映させたものにするため,流域踏査を行う予定にしている。 最終的には,開発した流域水循環モデルに水の安定同位体比の動態モデルを組み込みたいと思っており,今後,これについても検討を行う。
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Research Products
(8 results)