2021 Fiscal Year Annual Research Report
植物の水利用戦略からみた光環境とストレス要因の複合影響の解明と環境制御への応用
Project/Area Number |
21H02322
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
渋谷 俊夫 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (50316014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 怜 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20547228)
遠藤 良輔 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (10409146)
地子 智浩 一般財団法人電力中央研究所, エネルギーイノベーション創発センター, 主任研究員 (60816479)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 環境制御チャンバー / 通水コンダクタンス / ストレス応答 / ガス交換 / フィトクロム |
Outline of Annual Research Achievements |
遠赤色光の少ない照射光下では,水ストレスに関する植物の環境影響が小さくなることが示唆されている.本研究では,遠赤色光の少ない照射光下において葉の構造が変化することで,葉内の通水コンダクタンスが高まることが,水ストレスを小さくすると仮説を立て,遠赤色光の割合が異なる照射光に順化した植物の葉内の通水コンダクタンスを調べた.キュウリ実生を, 遠赤色光を含む照射光(FR+)または遠赤色光を含まない照射光(FR-)の下で第2本葉展開まで育成した.光源にはLEDパネルを使用し,青色光,緑色光,赤色光の割合を30%,35%,35%とした.FR+の試験区では遠赤色光に対する赤色光の比を自然光に近い1.2とした.FR+またはFR-で生育したキュウリ実生の第1本葉の通水コンダクタンスを,減圧チャンバー法を用いて計測した.通水コンダクタンスはFR-に順化した葉においてFR+に順化した葉よりも大きかった.葉面積あたりの乾物重は,FR-に順化した葉においてFR+に順化した葉より大きかった.このことは,遠赤色光の割合が小さい光照射下では葉が厚くなることを意味する.FR-に順化した葉の通水コンダクタンスがFR+よりも大きくなった理由として,葉が厚くなることで,それにともなって通水性に及ぼす構造的特性が変化したことが考えられた.次に,FR+またはFR-において,相対湿度90%で順化したキュウリ実生を相対湿度40%に低下させたときのガス交換および水分状態の変化を調べた.相対湿度を低下させたときの水ポテンシャルおよび気孔コンダクタンスの低下は,FR-においてFR+よりも小さかった.このことは,FR-ではFR+よりも相対湿度の低下によるストレス影響が小さいことを意味し,その要因としてFR-において葉内の通水性が向上したことが考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
減圧チャンバー法を用いることで通水コンダクタンスを比較的簡便に計測できるようになった.遠赤色光が通水コンダクタンスに及ぼす影響について,当初の仮説通りの結果が得られており,より詳細な実験を行うことで,光質が通水コンダクタンスを変させる要因を解明できると考えられる.今後の研究の推進方策も整理できていることから,おおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に確立した計測手法を用いて,通水コンダクタンスと水ストレス応答との関係を明らかにする.具体的には,異なる光環境に順化した植物を水ストレス環境に移し,移動前後の生育特性および水輸送特性を評価することで,光環境と水ストレス要因の複合影響に対する通水コンダクタンスの関与を明らかにする. 光環境による葉の構造的変化は,水輸送だけでなくCO2輸送にも影響を及ぼす可能性があることから,異なる光環境に順化した葉内のCO2拡散コンダクタンスの変化を含めて明らかにする.
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