2022 Fiscal Year Annual Research Report
転写共役修復 (TCR)の分子メカニズム解明とTCR欠損ヒト遺伝性疾患の分子病態
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21H02399
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中沢 由華 名古屋大学, 環境医学研究所, 講師 (00533902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻 朋男 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80508317)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 転写と共役したDNA修復 / RNAポリメラーゼ / ユビキチン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
転写と共役したDNA修復機構 (transcription coupled repair: TCR)は、転写が活発に行われている領域に生じたDNA損傷を、優先的かつ効率良く修復するシステムであり、生体の恒常性維持に重要なメカニズムである。本研究では、DNA損傷箇所で停止したRNA合成酵素がユビキチン化修飾を受けてTCRを開始・制御する分子機構の詳細解明に取り組むとともに、TCRの破綻により発症するヒト疾患の病態を明らかにすることを目指している。紫外線誘発DNA損傷に対するより詳細なTCRの制御メカニズムを理解するため、確立済みの特殊なChIPseq法を応用することで得られた各種TCR因子のChIPseqデータについて、継続した解析を実施した。合わせて、各種DNA修復関連因子が欠損したモデル細胞での比較検討を行ったほか、DNA損傷種特異的な新たなChIPseq法の開発に取り組んだ。DNA損傷による転写阻害がもたらす遺伝子発現の撹乱に起因する生体影響を調査するため、樹立済みのTCR欠損モデルマウスの病態解析を継続して行った。さらに、TCRの分子メカニズム解明に向けて、新たなアプローチでの解析を取り入れるため、必要となる遺伝子編集細胞シリーズ (複数の変異を組み合わせて持つ十数種類の細胞株)作製を継続して進めた。また、TCR 機能の異常が疑われており疾患原因変異が未同定であるヒト症例について解析を行ったところ、既知の関連遺伝子上には原因と考えられる変異が特定されない症例が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種TCR因子のChIPseqデータについて継続した解析を実施したほか、既存のデータとの比較検討を行い、ゲノムレベルでのTCRの詳細調査を順調に進展させた。また、各種DNA修復関連因子が欠損したモデル細胞での検討やDNA損傷種特異的な新たなChIPseq法の開発に取り組んだ。さらに、樹立済みのTCR欠損モデルマウスの病態解析を継続して実施しているほか、TCRの分子メカニズム解明に向けた新たなアプローチでの解析を取り入れるため、遺伝子編集細胞シリーズ (複数の変異を組み合わせて持つ十数種類の細胞株)作製を継続して進めており、順調に進捗している。さらに、TCR 機能の異常が疑われた疾患原因未同定のヒト症例に関して、新たな遺伝子変異が原因である可能性が出てきており、本症例の詳細な解析に取り組むことで、研究の更なる展開が期待される。以上のことより、本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
TCRの分子メカニズム解明のため、引き続き、ChIPseq (クロマチン免疫沈降/次世代ゲノム解析)により、TCR反応制御と転写再開の時空間解析を実施する。並行して、様々なDNA損傷種の解析に特化した新たなChIPseq法の開発に取り組む。また、DNA損傷処理条件下でのRNAポリメラーゼIIのユビキチン化修飾やTCR反応の進行について、各種遺伝子編集細胞 (TCR欠損/DNA損傷修復欠損/RNAポリメラーゼIIユビキチン化修飾サイト変異細胞)を用いた分子・細胞生物学的調査を継続するほか、モデルマウスを活用したTCR破綻の個体への影響についても、引き続き検討する。さらに、新たな遺伝子変異が疾患原因である可能性が示唆された症例について詳細な解析を実施し、原因変異特定を試みる。候補となる症例が複数得られていることから順次解析を進め、有力な疾患原因遺伝子変異が抽出された場合には、より詳細な変異解析へ移行し、真偽検証を進める。
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