2021 Fiscal Year Annual Research Report
Decoding the histone code through higher-order structure
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21H02403
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
島田 緑 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (60444981)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロリン異性化 / ヒストン / がん / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がんの新たな治療標的を同定するために、乳がんの予後不良因子として、FKBP52 (FK506 Binding Protein 52)を同定した。乳がん細胞株(MCF7)において、FKBP52の発現を抑制すると、エストロゲン受容体ERαの分解が亢進するためERαの発現量が減少し、がん細胞の増殖を顕著に阻害した。重要なことに、内分泌治療抵抗性となった乳がん細胞株(MFR: MCF7 derived fulvestrant resistance)に対しても、FKBP52を阻害することで、ERαの発現量およびがん細胞の増殖を抑制できる結果が得られた。ヒトにはFKBPファミリーは16因子存在する。この中でFKBP52と最も相同性の高いFKBP51の機能を調べたところ、FKBP51は①乳がんで発現が減少する、②高発現は生存期間を延長する、③ERαの分解を促進するという、FKBP52とは逆の機能を有することが判明した。以上の結果から、FKBP52はERαを安定化することにより、ERαの機能を増強し、がん細胞の増殖を促進させることが分かった。一方、FKBP51はFKBP52と競合してERαと結合し、ERαの分解を促進する機能を持つことが示唆された。FKBP52はほとんどのがんで高発現していることから、基本的な細胞増殖に関する機能を持つことが示唆される。そこでヒストンの異性化に着目し、FKBP52はヒストンを異性化することを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FKBP51とFKBP52によるプロリン異性化反応を測定するin vitroアッセイ系を構築することを目的に、まずヒストンH3のペプチド(C末端は標的のProの次にPheとペプチジル-パラニトロアニリン:pNAを融合したペプチド)を合成した。FKBP活性によりProがトランス体となると、キモトリプシンが選択的にPheを切断し、遊離されたpNA由来の吸光度変化の速度を検出した。その結果、FKBP52野生型は異性化することが分かり、FKBP52酵素活性変異体は異性化しなかった。一方、FKBP52と相同性が高いFKBP51野生型は異性化しなかったことから、FKBP52特異的な反応であることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
FKBP52は乳がんや前立腺がんなど多くのがんで過剰発現しているが、その基質はほとんど同定されていない。ヒストンH3がFKBP52の標的となっていることが明らかとなったことから、ヒストンH3のプロリンの異性化が生命現象に与える影響を追究ことが重要である。今後は、ヒストンH3プロリンのシス体、トランス体、FKBP52がゲノム上のどの領域に存在するかを網羅的に検証する。そのためには、ヒストンH3プロリンのシス体、トランス体特異的抗体を作製することが必須である。ヒストンH3のプロリンを含むペプチドを合成し、このペプチドを抗原としポリクローナル抗体を作製する予定である。この手法を用いて過去にシス型およびトランス型特異的抗体を作製した報告があり (Howe et al., Mol. Cell, 2014)、このような抗体の作製は可能であると期待される。このような抗体ができれば飛躍的にプロリン異性化の理解が進むと予測され、先駆的な研究成果が期待される。
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