2021 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムワイド探索に基づくスフィンゴ脂質再利用経路の包括的な分子機構解明
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21H02435
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
山地 俊之 国立感染症研究所, 細胞化学部, 室長 (50332309)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷田 以誠 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (30296868)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スフィンゴ脂質 / サルベージ経路 / ゲノムワイドスクリーニング / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
生体膜脂質の重要な構成成分であるスフィンゴ脂質は、新生経路(de novo経路)の他、血中・細胞膜由来のスフィンゴ脂質がリソソーム分解を経て再利用される経路(サルベージ経路)により生合成される。サルベージ経路の生理的重要性は、リソソームにおけるスフィンゴ脂質の分解不全が遺伝性疾患を引き起こすことから示唆されるが、同経路のスフィンゴ脂質輸送機構に関しては十分な解明に至っていない。本研究ではサルベージ経路に焦点を当て、申請者がゲノムワイド探索で同定したこの経路に関与する遺伝子候補群を生化学的・細胞生物学的に解析することで、スフィンゴ脂質のリソソームから生合成の場である小胞体に至る輸送機構の全容解明を目的とする。 本年度(延長を含む)は、スクリーニングで濃縮された遺伝子群を複数選択し、これら遺伝子のノックアウト細胞及び発現復帰株を作製した。程度の差はあるものの、選択した多くの遺伝子が血清由来スフィンゴ脂質の代謝に影響する、すなわちサルベージ経路に関与することをFACS解析により確認した。その中には以前よりサルベージ経路への関与が知られている酸性スフィンゴミエリナーゼが含まれており、ノックアウト細胞を用いた解析で、サルベージ経路が大幅に不全となっていることを改めて確認した。これらのことは本ゲノムワイドスクリーニングが適切に目的遺伝子を選抜していることを示唆している。なお選抜した遺伝子群はde novoの生合成には大きな影響を与えなかった。 また無血清培地をベースにした血清由来スフィンゴ脂質の取り込み、及び代謝を追跡するための実験系を検討し、時間経過を追って脂質代謝の変化を追うことが可能な条件を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属機関におけるコロナ業務以外の研究活動制限があり、進展が大幅に遅れたため、研究期間延長を行った。濃縮された遺伝子のノックアウト細胞及び発現復帰株の作製等、研究に必要な道具作りに関しては、一定の進展を見せた。スクリーニングで同定された複数の因子がサルベージ経路に関与していることを確認したことより、今後に繋がる成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作製した遺伝子ノックアウト細胞群を用いて、以下の研究を遂行することにより、同定した因子のスフィンゴ脂質サルベージ経路における機能解明を行う。 1. 令和3年度に構築した血清由来スフィンゴ脂質の取り込み及び代謝の追跡法を用いて、取り込み時からのスフィンゴ脂質各分子種の変化を測定する。サルベージ経路に関与することが知られている代謝酵素(酸性スフィンゴミエリナーゼ等)のノックアウト細胞を用いて、各分子種の変化の妥当性を検討する。 2. 同定した遺伝子の機能が重複しているか(もしくは直列に機能しているか)、それとも並列で機能しているか調べるため、種々のダブルノックアウト細胞株を作製する。シングルノックアウトと比較して、ダブルノックアウトでサルベージ経路への影響が相乗効果を示すか、FACSを用いて検討する。 3. 同定したタンパクの抗体を入手、もしくは作製し、各遺伝子KO細胞における発現量の変化、細胞内局在の変化を調べる。
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Research Products
(9 results)