2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21H02458
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中山 啓子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (60294972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟山 亮 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20452295)
中川 直 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 講師 (30707013)
細金 正樹 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30734347)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | SETD5 / 抗癌剤 / 細胞増殖 / エピゲノム / 膵臓癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵臓がん由来のRAS活性化型変異細胞(以降 PancCAと記載)のMEK阻害薬処理によって得られる阻害薬耐性細胞では、SETD5のタンパク質発現量が著しく増加することが報告されていた。 まず、この報告の再現性と汎用性の確認を行った。マウス膵臓がん由来のRAS活性化型変異細胞(KPC・AK4.4)を用いて、MEK阻害薬またはHDAC3阻害薬を添加し3日から12日間培養した。形態の変化や増殖の低下が観察されたがSETD5タンパク質蓄積を誘導することができなかった。これまでの報告とは、実験条件が多少異なっているが、一般的にRASの変異により増殖が活性化している腫瘍においてMEK阻害薬抵抗性獲得に、SETD5の発現量の変化は貢献していないと結論付けた。 これまでの我々は、神経細胞で、SETD5は細胞増殖に関わる分子の翻訳を制御していることを見出している。そこでRAS活性化型変異細胞においてもSETD5が同様の機能を有するのか調べることとした。CRISPR-Cas9システムを用いて、SDTD5を持たないRAS活性化型変異細胞(AK4.4-SETD5del)を作製した。In vitro の培養系では、AK4.4-SETD5del細胞は、野生型AK4.4に対して明らかな増殖の違いや、MEK阻害薬に対する感受性の違いを見出すことはできなかった。そこで、これらの細胞を同系統のマウス皮下に接種し、in vivo での腫瘍増殖能を調べたところ、AK4.4-SETD5delより発生した腫瘍は、野生型細胞より発生した腫瘍に比して、著しく腫瘍増大率が低下していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要に記載したように、本研究計画は、既報の研究結果および考察に基づき研究計画が立案されていたが、我々の研究チームでこの結果は、一般的なRAS変異細胞におけるMEK阻害薬抵抗性獲得のメカニズムであるとは結論付けられなかった。 そこで、RAS変異細胞(AK4.4)におけるSETD5の機能解析を行うことに研究計画を修正した。その目的のために、まずSETD5を欠失している細胞AK4.4-SETD5delの作製を行い、その細胞の表現型の確認を行った。培養系では明らかな表現型の差異を認めることはできなかったが、腫瘍形成実験で差が認められたので、今年度以降は、この表現型をもたらすメカニズムについて研究を発展させる計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降は、SETD5欠失AK4.4 と野生型AK4.4 の間の表現型について解析を継続する。in vitro の培養系では細胞増殖などに差が見られないのに対して、細胞と同じ系統に皮下移植した場合、腫瘍の増大速度に著しい差が見られている。この表現型について、細胞生物学的な解析とともに、その分子機構の解析も行う。 まず、腫瘍の病理学的な解析を行う。HE 染色によって、組織の構造と構成する細胞の特徴を確認する。Ki-67の免疫染色やTUNEL 解析を行うことで、SDTD5欠失による細胞増殖への影響やアポトーシスへの影響について検討を行う。また、腫瘍塊は、多様な細胞によって構成されていることが知られている。そこで、SDTD5有無が免疫細胞や線維芽細胞(CAF)の誘導へ与える影響について、免疫細胞や線維芽細胞のマーカーを用いた免疫染色を行うことで、これらの細胞の集積とその割合に差があるか、集積した細胞の活性化状態を免疫染色によって調べる。 さらに腫瘍のトランスクリプトームを行うことで、増殖の差を産んでいる遺伝子の同定を試みる。特に腫瘍塊に非腫瘍細胞である間質細胞の分布に差が見られる場合には、腫瘍塊全体でのトランスクリプトームでの解析の解釈が困難になることが予想されるので、シングルセルmRNAシークエンスの適応も考える。 一方で、この様な差を産んでいるのが、SETD5のどのような機能によっているのかを調べるために、野生型のSETD5に加えて、DNA 結合能を欠失させたSETD5などをSETD5欠失細胞に発現させ、表現型のリカバリーの有無を調べる。これによって、SETD5の機能ドメインを決定し、その機能の探索を行う。これによって表現型を産み出している分子メカニズムを決定するための端緒を得る。
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Research Products
(5 results)