2021 Fiscal Year Annual Research Report
Biological research foundation formation and neuroscience studies based on transposon-mediated gene trap methods
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21H02463
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
川上 浩一 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 教授 (70195048)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 遺伝子トラップ / 終脳 / エピソード記憶 / 空間学習 / 神経毒素遺伝子 / Gal4-UAS法 |
Outline of Annual Research Achievements |
発生過程において哺乳類の終脳の外套は神経管の膨出(evagination)により形成されるが、魚類の終脳の外套は外翻(eversion)により形成される。このため、対応する機能領域の形態・配置は異なったものとなる。魚類終脳において、形態学的考察によって情動学習や空間学習に重要とされている哺乳動物脳の扁桃体や海馬に対応する領域が推定されてきたが、神経回路レベルでの機能的解析はなされてこなかった。本研究では、未知であるゼブラフィッシュ 終脳のエピソード記憶および空間学習を司る(哺乳類脳の海馬機能を担うと考えられる)神経回路を明らかにすることを目的とした。 (1)我々が独自に開発してきたトランスポゾンを用いた遺伝子トラップ法を用いてスクリーニングを実施し、特定の神経細胞を可視化あるいは操作できるトランスジェニックフィッシュ系統を約100系統以上開発した。これらを活用して共同研究を推進した。 (2)ゼブラフィッシュ終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを得ることに成功した。このトランスジェニックフィッシュ系統とUASの下流に神経毒素遺伝子をもつトランスジェニックフィッシュをかけあわせ、二重トランスジェニックフィッシュを作製し、行動解析実験を行なった。 (3)エピソード記憶を必要とする『トレース』恐怖条件付けアッセイシステムの開発を行った。また、空間学習をアッセイするためのシステムを開発した。 (4)終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュとUASの下流に神経毒素遺伝子をもつトランスジェニックフィッシュをかけあわせて得た二重トランスジェニックフィッシュは、これらの学習アッセイシステムにおいて欠損を示した。すなわち、このGal4発現神経細胞群がエピソード記憶および空間学習を司っていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の研究に成功したので、研究はおおむね順調に進展していると考えている。 (1)我々が独自に開発してきたトランスポゾンを用いた遺伝子トラップ法を用いてスクリーニングを実施し、特定の神経細胞を可視化あるいは操作できるトランスジェニックフィッシュ系統を約100系統以上開発した。 (2)ゼブラフィッシュ終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを得ることに成功した。このトランスジェニックフィッシュ系統とUASの下流に神経毒素遺伝子をもつトランスジェニックフィッシュをかけあわせ、二重トランスジェニックフィッシュを作製し、行動解析実験を行なった。 (3)エピソード記憶を必要とする『トレース』恐怖条件付けアッセイシステムの開発を行った。また、空間学習をアッセイするためのシステムを開発した。 (4)終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュとUASの下流に神経毒素遺伝子をもつトランスジェニックフィッシュをかけあわせて得た二重トランスジェニックフィッシュは、これらの学習アッセイシステムにおいて欠損を示した。すなわち、このGal4発現神経細胞群がエピソード記憶および空間学習を司っていることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ゼブラフィッシュ終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュにおけるGal4発現神経細胞の形態学的解析を行い、神経ネットワークを明らかにする。 (2)ゼブラフィッシュ終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュにおけるGal4発現神経細胞の組織化学的解析を行い、神経細胞の種類を明らかにする。 (3)ゼブラフィッシュ終脳の背側側方部の神経細胞でGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュにおけるGal4発現神経細胞のRNA-seqによる分子生物学的解析を行い、その性質を明らかにする。
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