2021 Fiscal Year Annual Research Report
Division of cellular function of nuclear transport pathways
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21H02482
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今本 尚子 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (20202145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 誠 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (00290891)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 核-細胞質間輸送 / Importin beta / Importin alpha / 基質特異的認識 / 細胞機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、特定の輸送経路で核内へ輸送される基質タンパク質を同定する技術を使って、12のImportinβファミリー核内輸送運搬体の大規模基質同定を行い、Importinファミリーが構成するヒト細胞の核内輸送経路全てを網羅した。この解析で、一つの運搬体分子が、従来考えられていたような共通配列を持たない多くの輸送基質を運ぶことを改めて証明することができた。その理由を理解することは輸送分野に残された根源的な問題の一つである。そこで、Transportin-SR(TrnSR)とImportin-13 (Imp13)の2つの運搬体分子を例にとって、一つの運搬体が共通配列を持たない基質を特異的に認識する仕組みの解析を進めた。この2つの運搬体は、一次構造上の相同性が高いにもかかわらず、我々の解析では少数の共通基質しか持たないことがわかっていたからである。先ず最初に、それぞれの運搬体が結合する基質との共結晶構造(報告済み)から得られた基質結合アミノ酸と、進化トレース法で高いKL-valueを持つアミノ酸をピックアップすることで、それぞれの運搬体が基質と結合するであろうと考えられるアミノ酸をピックアップした(TrnSRは5アミノ酸、Imp13は10アミノ酸)。それぞれのアミノ酸に変異を加えて、我々が同定した基質候補と総当たりで、Beads Halo法を利用したハイスループット結合解析を行った。代表的なものは、表面プラズモン共鳴(SPR)で結合を定量した。また、結合に関与する運搬体上のアミノ酸残基の違いによって基質タンパク質をグループ分けして、構造情報を解析した。その結果、運搬体-基質の結合様式には、従来考えられていたような基質上の共通配列と運搬体分子上の特定部位の定型的な結合を遥かに超えた多様性があり、運搬体と基質の特異性決定は予想以上に複雑であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運搬体と基質構造の多様性を理解するための解析を進めることができた一方で、多様な輸送経路が存在する重要性の生理的意義を知るための解析は難航している。その理由の一つは、老化(または分化)細胞モデルの扱いが予想外に困難で、得られた結果に揺らぎが生じるからである。特に、輸送因子が変動した結果、核と細胞質のタンパク質の種類と量が変化すると考えられるが、それを調べるための生化学的分画実験が従来法では不十分であることがわかった。中でも、これまでの方法では、可溶性の核タンパク質を核画分に正確に回収することが困難であった。そこで、従来のホモジナイザーや低張液を用いた方法ではなく、細胞膜に豊富なコレステロール特異的な界面活性剤であるジギトニンを用いた方法を基礎に最適化し、HeLaS3細胞を90%以上の効率で透過処理できるまで引き上げる条件を整えることができた。ジギトニンを使用する他、膜を可溶化する操作は室温で行うことがもう一つの特徴である。さらに、透過処理の際、核膜孔を通って流出する低分子量核タンパク質群を核内に閉じ込めるため、ジギトニンにWGA(小麦杯芽アグルチニン)を加えて処理を行うことにより、細胞膜の透過と核膜孔通過の遮断を同時に行える方法を確立した。得られた核分画の組成を網羅的な質量分析によって分析してみると、WGAの添加によって低分子量タンパク質が本来の局在により近い状態で分画できることを確認した。市販の分画キットでは、多くの場合可溶性核タンパク質が細胞質画分に流出したのに対し、今回構築した方法では流出を最小限に抑えられていることが分かった。さらに、本来不溶性であるタンパク質の溶出も見られず、より正細胞の状態に近く高純度に核可溶性タンパク質画分が得られた。これらの技術について、理研鼎業を通して、国内と国外の特許出願を行うとともに、投稿論文が受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した分画手法を用いて、細胞の老化や分化が誘導できる様々な細胞モデル系を使って、運搬体の発現情報と、発現変化する運搬体の基質情報を組みわせて解析を進める。また、核輸送因子Importinαの熱感受性によって影響を受ける輸送基質の同定と、Importinαの安定性に寄与する因子の同定を進める予定である。
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Research Products
(19 results)