2021 Fiscal Year Annual Research Report
Wntリガンドの動態計測に基づく組織発生機構の解析
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21H02498
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
高田 慎治 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 教授 (60206753)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 細胞 / 発生・分化 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分泌シグナルの拡散状態の違いに注目し、それを生み出す分子機構とその生物的意義を検討することを研究の中心に据え、以下の3つの問いを設定している。(1) 複数の複合体構造や異なる拡散性を取りうるという特徴は、Wntの種類や発現細胞の違いに関わらず共通にみられることか、それとも多様性があるのか。(2)拡散性が異なる状態への移行はどのように制御されるのか。(3)低拡散状態と高拡散状態の各々が持つ生物学的意義とは何か。 これらの問いに対して、これまでに得られた結果のうち特筆すべきものは以下のとおりである。 Wnt3aとは異なるシグナル伝達経路を活性化する場合が多いWnt5aとWnt11に着目し、複合体構造を分析超遠心により解析した。検出感度を上げるために、GFP以外の緑色の蛍光蛋白質を複数検討し、mCloverならびにNeonGreenを用いることにより活性を保持しつつ、蛍光強度を高めることに成功した。分析超遠心による解析の結果、Wnt5aはWnt3aと同様なタンパク質複合体を形成するのに対し、Wnt11では結果が大きく異なっていた。このことから、異なるWntタンパク質の間では複合体構造に多様性があり、その多様性が細胞外における各々のWntの挙動に影響している可能性が示唆された。さらに、 Wntの拡散性を比較するために、アフリカツメガエル胚に蛍光蛋白質で標識したWntを発現させ、細胞外における動態を観察するとともに、Wntに結合するさまざまなタンパク質が及ぼす影響を明らかにした。 一方、 Wnt3a-Fz5ノックイン変異体マウス胚を用いて、神経中胚葉前駆細胞の発生におけるWntの拡散の必要性の検討を始めた。神経管内の各領域で発現するマーカー遺伝子の発現パターンをもとに、Wnt3a-Fz5ノックイン変異体胚におけるWntの作用を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究をはじめるまで、異なるWnt分子間において、複合体構造や拡散様式に多様性が存在するかどうかは不明であったが、Wnt結合タンパク質であるsFRPへの結合特異性や、sFRP複合体による細胞膜上タンパク質とWntとの親和性において、著しい多様性が存在することが明らかになり、Wnt分子の拡散制御に関して新たな分子機構が存在することが強く示唆された。これは、Wnt分子の拡散機構を理解する上での貴重な発見であり、今後の発展が強く期待できることから、本研究は当初の予定以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
sFRPによるWntの拡散機構の制御を研究の軸にしつつ、アフリカツメガエルやゼブラフィッシュでのWntのイメージングと定量的解析、マウス変異体を用いた遺伝学的解析と組み合わせることにより、Wntの拡散機構とその意義についての理解を深めていきたい。
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