2021 Fiscal Year Annual Research Report
Dissection of iron deficiency response involving novel short peptide FEP1.
Project/Area Number |
21H02509
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
平山 隆志 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (10228819)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横正 健剛 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (50790622) [Withdrawn]
馬 建鋒 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (80260389)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 短鎖ペプチド / 鉄欠乏応答 / シロイヌナズナ / 遺伝学的解析 / 網羅的転写物解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナ短鎖ペプチドFEP1がどのように鉄欠乏応答の制御および鉄ホメオスタシスに関わっているかを明らかにするため、独自に作成したfep1欠損株やFEP1誘導発現形質転換株を利用して網羅的遺伝子発現解析を行った。詳細なデータ解析から、FEP1は維管束組織おける鉄欠乏応答で重要な役割を持つという知見を得た。また、FEP1類似遺伝子の植物界における保存性を調査し、維管束系を持つシダ植物にはFEP1類似遺伝子があるが、コケ植物には見当たらず、維管束組織との関わりが示唆された。シダ植物のFEP1様遺伝子はシロイヌナズナのものと同様鉄欠乏により誘導されるが、FEP1の活性に不可欠となるC末端の構造が異なっており機能については不明な点が多いが、ナス科植物にも同様の遺伝子が見つかっており、今後解析が必要である。さらに、FEP1周辺の機能因子の同定を目的に、FEP1を含む鉄欠乏応答遺伝子が恒常的に発現しているミトコンドリアpoly(A)制御関連変異株ahg2-1を背景にして、恒常的鉄欠乏応答形質の抑制変異を2系統獲得しているが、その一つの変異の同定に成功しRNA代謝関連の遺伝子が関与していることを明らかにした。一方、出芽酵母を用いた鉄欠乏応答制御の再構成を試み、植物で見られる応答がほぼ再現された。植物細胞を用いた実験で邪魔となる様々な二次的な影響を排除できる再構成系を用いて、今後構成因子に人為的な変化を導入し、その影響を調査することで精密な制御系の描出が可能と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自に作成したfep1欠損株およびエストロゲン依存的FEP1誘導発現形質転換株を対象に、網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、非常に興味深いことに、fep1欠損変異株では鉄存在下にもかかわらず鉄欠乏応答遺伝子の一部が地上部でも地下部でも強く発現していることが明らかとなった。また、一過的にFEP1を誘導発現させた場合、根では鉄欠乏応答遺伝子が誘導されたが、一方で地上部では、FEP1が誘導されているにもかかわらず鉄欠乏応答遺伝子の発現に大きな変動は見られなかった。これまでの報告やpFEP1:FEP1-GFPの組織特異的発現解析から示唆された維管束組織での高発現、鉄の転流に関わるopt3変異との関連、fep1-1での鉄の組織別蓄積状況などの解析結果から、FEP1は維管束組織における鉄の欠乏応答制御に関わっていると考えられた。一方、FEP1の植物における保存性について調査し、FEP1類似遺伝子は、コケ類では見られないがシダ植物にはあることが判明した。ただし、シダ植物の類似遺伝子は鉄欠乏に応答するもののC末端に余分な配列がありFEP1同様に機能するかどうかは不明である。更に、FEP1関連の新たな因子を同定するためにFEP1を含む鉄応答遺伝子が恒常的に発現するahg2-1変異を背景にし、鉄応答遺伝子発現が低下するサプレッサー変異株2つの解析を行った。2つのうち一つの変異遺伝子をゲノム解析により同定したところ、RNA代謝に関わっていることが明らかとなった。興味深いことに、ahg2-1変異で見られるミトコンドリアmRNAのpoly(A)付加は変化が見られず、この変異および遺伝子の解析によりpoly(A)付加とmRNA代謝との関連を明らかにする緒が見いだせると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、昨年度の研究から示されたFEP1の維管束組織における機能について、更に調査する。様々な組織得的にプロモーターでFEP1遺伝子を制御する形質転換体をfep1-1背景で作成し、組織特異的発現の重要性を明らかにする。シダ植物のFEP1類似遺伝子の機能を、シロイヌナズナやタバコを用いた一過的発現系により調査する。特にFEP1の機能に必要なC末端を改変した場合などの影響を調べる。また、興味深いことに同様の遺伝子が、ナス科植物でも見いだされており、これらの機能も同様に解析する予定である。これにより、FEP1の新たな制御機構が明らかになることが期待される。また、ahg2-1抑制変異の同定を行い、同定された遺伝子が鉄欠乏に直接関与するかを明らかにする。更に、FEP1関連変異を取得する試みを、pbHLH39:LUC形質転換fep1-1変異株などを用いて探索する。一方、出芽酵母を用いて構築した鉄欠乏応答遺伝子制御再構成系を用いて、関与する因子の機能と因子間の相互作用を明らかにする。特に、2021年にLiらにより報告された、BTSとFEP1との関係について、これらの因子に変異を導入、その影響を調査、提唱されているモデルと一致するかどうか検証する。これら研究を通して、FEP1の生理的機能を明らかにしていく。
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