2021 Fiscal Year Annual Research Report
New Aspects of Sleep-Wake Regulation of Drosophila
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21H02529
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
粂 和彦 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (30251218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 淳 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (40432231)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 睡眠 / 覚醒 / 概日周期 / ショウジョウバエ / ドーパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠は、身近な現象だが、現在でも謎が多い。本研究課題は、種を超えて進化的に保存されている睡眠という生命現象の制御機構と生理的意義の解明を目指して、研究代表者が20年前からパイオニアとして世界をリードしてきたショウジョウバエをモデル生物とする睡眠研究を継続的に発展させるものである。ショウジョウバエは、100年以上にわたり遺伝学のモデル生物して使われ、概日周期行動の分子機構の解明などに用いられるが、睡眠の制御遺伝子も哺乳類と共通するものが多い。今期の研究では、[1]覚醒の制御回路、[2]覚醒と概日周期との関係、[3]覚醒と睡眠の恒常性の関係に焦点をあてた研究を進めている。2021年度は、新規課題の初年度で、前期から継続して発展させた研究の成果を、以下の内容の4報の論文として発表した。1.睡眠制御機構について、各種のアミノ酸が睡眠に与える影響を網羅的に解析した結果、D-セリンという稀少なアミノ酸が睡眠制御に働く可能性を示した。2.新規受容体遺伝子の解析から、哺乳類のノルアドレナリンという覚醒物質に相当するオクトパミンの覚醒制御における役割を解明した。3.代謝と睡眠をつなぐ物質として、インスリン様ペプチドが時計神経で睡眠を制御することを明らかにした。4.ドーパミン神経のサブセットの一つが、覚醒を制御する新規の神経回路を解明した。また、今期の研究課題の中心テーマの一つである睡眠恒常性について、睡眠量を制御する遺伝子の候補として、哺乳類で睡眠欲求指標リン酸化タンパク質として発見された遺伝子群を機能スクリーニングして、睡眠制御に関与する遺伝子の候補を少なくとも5つ発見して解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、種を超えて進化的に保存されてきた睡眠という生命現象の制御機構と生理的意義の解明を目指して、研究代表者が20年前からパイオニアとして世界をリードしてきたショウジョウバエをモデル生物とする睡眠研究を継続的に発展させるものである。特に今期の研究では、[1]覚醒の制御回路、[2]覚醒と概日周期との関係、[3]覚醒と睡眠の恒常性の関係に焦点をあてた研究を進めている。2021年度は、新規課題の初年度で、前期から継続して発展させた研究の成果を、以下の内容の4報の論文として発表した。1.睡眠制御機構について、各種のアミノ酸が睡眠に与える影響を網羅的に解析した結果、D-セリンが睡眠を誘導することを見出し、さらにD-セリンの作用部位の一つとしてNMDA型グルタミン酸受容体を発見、さらに代謝酵素の変異を用いた解析から、D-セリンが生理的にも睡眠制御に働く可能性を示した。2.新規受容体遺伝子の解析から、哺乳類のノルアドレナリンに相当するオクトパミンの活動制御における役割を解析した。3.代謝と睡眠をつなぐ物質として、インスリン様ペプチドが時計神経で睡眠を制御することを明らかにした。4.ドーパミン神経のサブセットの一つが、前大脳橋(protocerebral bridge, PB)に投射し、そこから扇状体(fan-shaped body, FB)を介して覚醒を制御する回路を解明した。また、これらの研究を発展させ、2報の論文を投稿中である。さらに、今期の研究課題の中心テーマの一つである睡眠恒常性について、睡眠量を制御する遺伝子の候補として、哺乳類で睡眠欲求指標リン酸化タンパク質として発見された遺伝子群を機能スクリーニングして、睡眠制御に関与する遺伝子の候補を少なくとも5つ見出し、学会で発表した。現在、詳細な解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、[1]覚醒の制御回路、[2]覚醒と概日周期との関係、[3]覚醒と睡眠の恒常性の関係に焦点をあてた研究を進める。具体的には、[1]では、覚醒を誘導するドーパミンの神経回路の詳細を解明する。これまで、2種類のドーパミン神経が覚醒を誘導する回路を解明したが、特に中心複合体のPB(前大脳橋)に投射するT1ドーパミン神経の活性化機構と、その生理的な役割を調べる。さらに、哺乳類のノルアドレナリンに相当するオクトパミンも覚醒物質として機能するが、その回路と機能についても詳細を解析する。[2]では、新規睡眠関連遺伝子であるSik3遺伝子が、概日周期制御を行う時計細胞で睡眠を制御することを発見したことから、単一神経細胞が概日周期と睡眠の両者を制御する機構について、詳細に解析する。特に、概日周期因子のPDF が、活動の周期だけではなく、活動量をどのように制御するかを解明する。[3]では、哺乳類で睡眠の要求性に比例してリン酸化量が増加するとされる一連のタンパク質のショウジョウバエでの機能を解析し、さらに覚醒状態とリン酸化量を調べることで、ショウジョウバエにおいても、睡眠の要求性が何らかのタンパク質の変化と比例するかを検討する。 2021年度には、[1]の研究を進めて論文として発表した。[2][3]については、24時間周期で変動するタンパク質のリン酸化状態を定量化する研究を行い、概日周期と睡眠恒常性の両方に関与する遺伝子群の機能を解析し、一部の結果を論文発表した。2022年度は、これらの研究を進める。特に、[1]については、PB(前大脳橋)からFB(扇状体)に投射後の神経回路を同定する。[2]については、Sik3遺伝子の下流因子の解析を進める。[3]については、新規睡眠制御遺伝子の機能部位を同定する。これらの結果を論文として公表することにも注力する。
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Research Products
(16 results)