2022 Fiscal Year Annual Research Report
The evolution of biological hierarchy reinforced by intraspecific parasitism: a test with social insects
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21H02537
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土畑 重人 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50714995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北條 賢 関西学院大学, 生命環境学部, 准教授 (70722122)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 階層性進化 / 社会性昆虫 / 比較ゲノミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,コロナ禍で実施できなかった大規模な野外調査を5月に実施できた.以前から継続している調査集団の寄生系統の頻度調査を行った.得られた寄生系統は実験室に持ち帰り,室内での異巣個体侵入実験に供した.寄生系統を排除する巣仲間識別のメカニズムは,異コロニー由来の通常系統に対するものと有意な差がないことが判明し,このことは寄生系統の異コロニー侵入の成功が確率的であることを示唆している.並行して,アミメアリ個体トラッキングのための撮影システムをセットアップした. 2021年度より実施している,RADseqデータにGWASを適用した「インダイレクトーム」解析においては,新たにコロニー内遺伝的多様性の程度と適応度との間に負の相関があることが判明した.これは,コロニー内の遺伝的一様性を維持する新規なシステムとして,そのメカニズム特定の必要性を示している. 2022年度には,アミメアリ上記2系統に加えて,国内産唯一の同属種であるトゲムネアミメアリのサンプリングに成功し,illuminaショットガンシーケンスを取得した.比較ゲノム解析において重要な情報である. 分担者・北條の研究室では,脳触角葉の糸球体数(これは嗅覚受容体の数とおおよそ一致する)を寄生系統と通常系統の間で比較し,寄生系統で顕著な減少が見られるという予備的な結果が得られた.これは本申請課題で提示した仮説を支持する発見であり,次年度以降の研究の方向性を示すきわめて意義深いものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は,前年度コロナ禍で実施できなかった野外調査に赴くことができ,また室内での異巣個体侵入実験も順調に進捗した.しかし,ドラフトゲノムからの遺伝子予測によって得られた遺伝子数が先行研究で得られている他種情報よりも多くなっており,精度の高い比較ゲノム解析にはまだ至っていないため,本区分とした.より充実したトランスクリプトーム情報も解析に加えることで,改善を図っている.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,ゲノム・トランスクリプトームの系統間および種間での比較を行い,寄生系統の適応に貢献した進化的新規性の特定を試みる.特に遺伝子予測の精度向上に努める. 前年度に得られた脳触角葉の糸球体数における系統間差の新規知見に基づき,寄生系統における行動の進化的変容の実態を解明する. GWASを応用した「インダイレクトーム」解析において見出された,コロニー内遺伝的多様性と適応度との間の負の相関について,SNPごとの相関の強弱を検討する. 前年度に引き続き,室内での行動実験・系統ゲノミクス解析のためのアミメアリ外群系統の野外でのサンプリング,NGSデータの取得を行う.すでに得られた行動解析の結果に基づいて執筆中の論文を国際誌に投稿する.
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Research Products
(4 results)