2021 Fiscal Year Annual Research Report
Testing the flexibility of dosage compensation by mimicking the initial and turn-over stages of sex chromosomes
Project/Area Number |
21H02539
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
野澤 昌文 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (50623534)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 遺伝子量補償 / 重イオンビーム / 性染色体 / ショウジョウバエ / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子量補償の即時性を検証するため、常染色体が性染色体と融合することで生じた起源の新しい性染色体(ネオ性染色体)を持つDrosophila mirandaとD. albomicansを用いて研究を進めた。ネオY染色体には多くの機能遺伝子が残存しているため、放射線を2種のオスに照射することでネオY染色体上の遺伝子を破壊し、ネオX染色体上の相同遺伝子が即時に遺伝子量補償を獲得するかを検証した。しかし、X線またはガンマ線を照射した20個体のオスゲノムをシーケンスしたところ、ゲノム中の欠失を1領域しか検出できなかった。そこで、理化学研究所の阿部知子博士の協力を得て、DNAの二本鎖を切断する重イオンビーム照射に切り替えることとした。これまでに、鉄イオン線を2Gy照射すると、照射しない個体と比べてF1個体数が半減することを明らかにした。現在、F1個体のゲノム配列を決定し、欠失領域の同定を進めている。 また、遺伝子量補償の柔軟性を検証するため、ネオ性染色体を持つ上記2種のメスとそれぞれの近縁種オスを交配し、ネオY染色体偽遺伝子が近縁種の相同常染色体機能遺伝子に置き換わった雑種オスを作成することで、性染色体転換期を模倣し、遺伝子量補償が消失するかどうかを調べた。これまでに雑種個体を用いたRNA-seqを行い、両種のネオX染色体は常染色体に転換しても遺伝子量補償が完全には消失しない可能性を明らかにした。また、遺伝子量補償の不可逆性の程度は性染色体が生じてからの時間にはよらないことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線とガンマ線照射実験では効率的にゲノム欠失個体を得ることができなかったが、重イオンビーム照射というより効率的な照射実験を定期的に行える目処が立ったため。また、雑種作成による遺伝子量補償柔軟性の検証がある程度予定通り実施できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
遺伝子量補償の即時性の検証に関しては、鉄イオンを照射した個体のF1オスのゲノム配列の決定を引き続き進める。欠失領域が見つかった個体に関しては、すでにその個体からRNAも抽出済みであるので、RNA-seqを行い、欠失領域に存在するネオY遺伝子のネオX相同遺伝子の発現量が上昇しているかどうかを検証する。また、アルゴンイオン、炭素イオンを照射した個体についても同様の実験・解析を行う。 遺伝子量補償の柔軟性に関しては、雑種において遺伝子量補償が低減した遺伝子とそうでない遺伝子の間に特徴があるか調べる。また、遺伝子発現量の変化が遺伝子量補償の変化ではなく雑種による影響である可能性を考慮するため、D. mirandaの2系統を用いて同様の実験を行う。
|
Research Products
(6 results)