2021 Fiscal Year Annual Research Report
コウモリ類におけるエコーロケーションの進化的起源の解明:一回起源か独立起源か
Project/Area Number |
21H02546
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小薮 大輔 筑波大学, プレシジョン・メディスン開発研究センター, 准教授 (60712510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武智 正樹 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10455355)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 進化発生学 |
Outline of Annual Research Achievements |
現生コウモリ類のもつエコーロケーション能の進化は一回起源なのか,あるいは独立に複数回起源したのか,未だ決着がついていない.特に,古生物学者を中心とした論陣が取る一回起源説と分子進化学者が取る独立起源説の対立が続いている.本研究は超音波の発声器官と受信器官の胎児期発生に着目し,比較解剖学とゲノミクスを組み合わせた全く新しい視点から検証を行い,コウモリ類におけるエコーロケーション能の進化的起源の解明を目指している.課題期間中,新型コロナウイルスの感染拡大継続により国内調査や海外渡航の困難,調査許可が下りない状況が続いたが,繰越年度となった2022年よりようやく野外調査が進められるようになった.2022年に新潟県および北海道にてそれぞれキクガシラコウモリおよびヒナコウモリの捕獲調査を行い,胎子標本の収集を行なった.また,ベトナム科学アカデミーの協力のもと,ベトナムにおいてオオコウモリ,キクガシラコウモリ,カグラコウモリの胎子標本の収集を進めた.集めた胎子標本はカルノア固定,PFA固定,RNAlater保存を行なった.必要な発生ステージ全てを網羅するには至っていないが,収集標本を用いて,免疫組織化学染色およびトランスクリプトーム解析を進めた.渦巻管,喉頭筋群,喉頭軟骨,舌骨を対象として,発生に関与するパターニング遺伝子(Tbx1, Bmp4, Fgf3, Isl1等)と器官分化遺伝子(Sox5, Sox6, Sox9, Acan, Col1A1, Col2A1, Scx, MyoD1, Myf5等)の遺伝子について時間的・空間的な発現パターンの類似性を収集したコウモリ類,マウス,スンクスで比較を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題期間中,新型コロナウイルスの感染拡大継続により特に野外でのサンプル収集を進められない状況も続いたが,ようやく収集が再開できるようになった.繰越年度となった2022年は国内において重要な繁殖時期に捕獲を進めることができ,胎子標本を豊富に収集することが出来た.これらを用いてin situハイブリダイゼーション,免疫組織化学染色,トランスクリプトーム解析を順調に進めることが出来ている.また,時系列トランスクリプトーム解析のためのバイオインフォマティクスパイプラインをマウスで確立し,論文を刊行できたことは意義高く,これにより種間比較を行うための解析基盤を早期に整備することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
国内における胎子標本収集は順調に進んでおり,恐らく2023年度中には研究課題の達成に必要なキクガシラコウモリとヒナコウモリの胎子標本の入手が済むと想定される.一方で,繁殖時期の特定が他群に比べ困難であること,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,ベトナムでの捕獲調査を複数回は行えなかったことにより,重要な対象群であるオオコウモリ類の胎児標本は不足気味となっている.2023年度はベトナムも調査受け入れがコロナ禍以前に戻りつつあるため,できるだけ調査を実施し,オオコウモリ類の胎児標本の収集に注力することを目指す.
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