2021 Fiscal Year Annual Research Report
子殺しの内分泌メカニズムから探る「親による子の保護」の新しい枠組み
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21H02569
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
竹垣 毅 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (50363479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿見彌 典子 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (20588503)
菅 向志郎 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (60569185)
福田 和也 北里大学, 海洋生命科学部, 助教 (20882616)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 親による子の保護 / 子殺し / 行動生態 / 繁殖 / 進化 / 魚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではロウソクギンポ雄の全卵食行動が、PRL放出ペプチド(PrRP)によって調節される卵保護行動と摂食行動の相乗効果で発現することを検証することを目的としている。 (1)繁殖期に全卵食雄と卵保護中の雄、摂食中の雄を採集した。神経活動マーカーpS6に対する一次抗体を用いて免疫染色を行い、脳内の25領域の神経活動を条件群間で比較した。さらに、各脳領域における神経活動の相関関係に基づいてネットワーク解析を実施し、全卵食欲求を担う機能的ネットワークの抽出を試みた。その結果、全卵食欲求、摂食欲求、および摂食刺激に関連して活動する脳領域をそれぞれ差別化できた。さらに、全卵食欲求に関連すると予想される機能的ネットワークを抽出できた。これらより、全卵食欲求の高い個体で特異的に活動する高次中枢(終脳脳)領域が存在するものの、全卵食行動自体はそれらの領域と摂食制御を担う脳領域の協調によって表現されることが示唆された。 (2)雄が卵の存在や数を卵の化学シグナル(フェロモン)を介して認識していることを検証するために、雄の嗅上皮に卵養育海水と海水のみをそれぞれ暴露する実験を行った。海水のみのコントロール実験の結果が不明瞭なため手法を検討中である。 (3)全卵食行動の発現にどのような脳内因子が関与するかを探索的・網羅的に調査するために、卵保護中と全卵食中の雄の全脳を用いてde novo トランスクリプトーム解析を行った。アノテーション精度が低いため、リファレンス配列を増やして再解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
雄のPRLの動態を把握するためにこれまでは脳下垂体内の遺伝子発現量で定量していたが測定値が不明瞭であるため、2022年度から血中のPRL濃度を直接測定可能なELISAキットを導入することになった。手法の確立にやや時間を要している。PRLの分泌を促すPrRPの脳内活性および活性部位を脳組織の免疫染色により明らかにする予定であるが、想定していた抗体とのマッチングが悪く染色がうまくいっ ていない。他の候補を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目【1】(1)PRLの動態把握:繁殖期に様々な保護段階(無保護・未発眼卵保護・発眼卵保護)の雄のPRLの動態を把握するためにこれまで脳下垂体内の遺伝子 発現量で定量する方法から、より精度の高いデータが期待される血中PRL濃度をELISA法で測定する方法に転換した。測定方法は確立できている。(2)PrRPの脳内活 性および活性部位を脳組織の免疫染色から明らかにする。染色が不調のため新たな抗体を検討する。(3) PrRPの投与実験を行い、全卵食を抑制する機能が有るか を確かめる。 研究項目【2】雄が卵の存在を化学シグナル(フェロモン)を介して認識していることを嗅上皮の免疫染色により示した上で、嗅上皮で受けた刺激が脳のどの領域を活性化させるかを特定する。 研究項目【3】全卵食中の雄に特異的に発現する脳内の遺伝子の解析を進める。特に数多く存在する摂食調節ホルモンの全卵食への関与に着目する。
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