2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H02590
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上野 将紀 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40435631)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 運動下行路 / 皮質脊髄路 / 脳梗塞 / 神経回路 / 再編 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳障害後におこる、脳-脊髄をつなぐ運動下行路の再編様式を明らかにし、障害部位別に起こる再編のパターンとその機能を体系化することを目的とする。脳の障害は、神経回路を破綻させ、運動をはじめとする神経機能の低下をもたらす。一方、失われた機能は、自然回復あるいは増悪したりと変容することが知られ、この機能の変化は、障害から逃れ残存した神経回路の可塑的、代償的な変化により起こると近年示されている。申請者はこれまで、脳障害後に運動機能を担う下行路の1つである皮質脊髄路が再編することを見出し、残された神経の可塑的変化が、機能の回復を導く鍵となる現象であると示してきた。適切な回路の可塑性を増強し治療標的とするには、多様な脳障害部位に応じて再編し機能回復をもたらす神経回路の局在やその挙動の理解が求められており、本研究ではその体系化を試みる。本年度は、光血栓形成により任意の大脳皮質領域に梗塞を引き起こすモデルを確立し、障害を逃れた大脳皮質の残存領域から伸びる皮質脊髄路が脊髄で再編する様式の変化を解析した。これまでマウスでは、頸髄に投射する皮質脊髄路ニューロンは大脳皮質の大きく3ヶ所 (運動野(CFA,RFA),感覚野S1)に分布することを見出していることから、この各脳領域が障害されるモデルを確立した。これらのモデルのうち、広範に脳梗塞を起こした場合には、障害対側の皮質脊髄路が頸髄において出芽・伸長して再編することがわかった。一方、やや小型の脳梗塞(RFA+S1領域)を起こした場合には、障害同側の皮質脊髄路が再編することがわかった。さらに、見出した再編軸索の接続や機能を解析する実験にも取り組み、その接続様式や機能が見えはじめた。得られた成果は、脳障害後におこる運動下行路の再編様式と機序の理解へつながるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、脳障害後におこる運動下行路の再編様式を明らかにし、障害部位別に起こる再編のパターンとその機能を体系化することを目的としている。本年度は、大脳皮質領域別に障害されるモデルを確立し、脳の障害部位に応じ、皮質脊髄路が異なる様式で再編することを明らかにすることができた。以上のことから、再編パターンの体系化へ向け研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに見出した皮質脊髄路の再編様式を足がかりに、再編した回路の持つ接続様式を詳細に調べ、またそれらが持つ機能の解明に取り組む。以上の研究から、再編した神経回路網の接続様式や機能を明らかにすることを目指す。
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