2021 Fiscal Year Annual Research Report
記憶形成に伴うシナプスタンパク質の集積・維持の制御機構
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21H02595
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
実吉 岳郎 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00556201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細川 智永 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (30602883)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シナプス可塑性 / 長期増強現象 / 相分離 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶の基盤であるシナプス可塑性の誘導・発現機構は詳細に検討されているが、刺激後にシナプス強度を維持する仕組みについてはほとんど明らかになっていない。本研究は、記憶の細胞レベルの現象と考えられる長期増強現象(LTP)に伴うシナプスタンパク質のダイナミクスを生物学的液-液相分離で説明することを目指している。In vitroでの実験の結果を神経細胞へと還元することで記憶形成に伴う分子のシナプス微小空間での動態を明らかにすることを目的とする。具体的には(1)CaMKIIは相分離により一過性のCa2+上昇を長期的な情報伝達の切り替えスイッチとして機能することを検証する、(2)CaMKIIは相分離によりシナプス内部構造制御を介し伝達効率を向上させることを実験的に証明する、(3)CaMKIIによる相分離を人為的に制御することでシナプス可塑性が誘導あるいは解除されるか検討する。 今年度は、CaMKIIとアクチン細胞骨格系制御分子の相分離について、最小構成タンパク質とリン酸化の関与の検討をした。構成要素にシナプスタンパク質が必要であること、特定分子のリン酸化が必須であることがわかった。また、CaMKIIの12-14量体形成と相分離形成に関して、TEVプロテアーゼよって多量体から単量体にできるCamKIIを作製し、細胞内でのグルタミン酸受容体との相分離による液滴形成に多量体が関わることを確かめた。さらに、グルタミン酸センサータンパク質GluSnFRをゲノム編集によって導入する遺伝子構築を作製している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シナプスタンパク質の相分離形成に関しては、シナプスに発現する複数のタンパク質が参加する相分離するグループと排除されるグループに分かれることやその条件を見つけている。さらにリン酸化が相分離形成に必要であるため、リン酸化依存的なタンパク質相互作用に関わると予想される分子群も検討していく。 グルタミン酸受容体の超解像イメージング研究に関しては、細胞表面に露出した受容体を認識する抗体の調製と染色条件を決定できている。また、センサータンパク質のシナプスでの局在化や発現が必要になっている。これに関し、ゲノム編集技術を利用したタンパク質挿入に関するいくつかの技術を検討している。 CaMKII分子の多量体形状と相分離形成に関しては、アソシエーションドメインを切り離せる改変CaMKIIを細胞内での発現および精製タンパク質の作製には成功しており、多量体が細胞内での相分離による液滴形成に必要である呼び実験結果を得ている。今後は切り離すTEVプロテアーゼの活性制御に関して、ラパマイシン誘導型、光活性化型などを一通りの遺伝子構築を完了しているため、これらの時空間制御の条件を検討していき、シナプル可塑性の人為的制御法開発につなげていく。
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Strategy for Future Research Activity |
PAKならびにLIMK1がCaMKIIとシナプス局所でLLPSを起こすことで、Tiam1-Rac-PAK-LIMK1経路を長期に活性化させるかテストする。LIMK1の基質コフィリンに対する脱リン酸化酵素SSH1Lの相分離形成に与える影響を検討する。AMPARならびにNMDARナノドメインの検出にはIRISとナノボディを組み合わせた超高解像度顕微鏡法を開発する。可視化したい分子に対するプローブは蛍光修飾した単鎖抗体、あるいはリガンドを用いる。活性帯の検出にはsynapto-pHluorinを用いる。さらにAMPAR ナノドメインでのグルタミン酸濃度を検出し、グルタミン酸を感知するAMPARの数をグルタミン酸センサータンパク質GluSnFRを用いて検出する。GluSnFRと内在性のAMPARとの共存が認められない場合、Mikuniらの方法を用いて内在性のAMPAR遺伝子を改変し、GluSnFRを挿入する。細胞内でLLPSを人為的に解除する方法を開発する。TEV protease認識配列(ENLYFQGS)をCaMKIIの会合ドメインとキナーゼドメインの間に挿入し、TEV酵素切断により基質に結合するキナーゼドメインから会合ドメイン切り離す。12量体を維持できなくなるためLLPSが解除されると期待される。光活性化型TEVの開発は、分割TEVとFKBP/FRBペアを用いたラパマイシン誘導ヘテロ二量体形成を応用し光誘導ヘテロ二量体形成モチーフであるCRY/CIBと融合させ作成する。また、光照射によりペプチド鎖が切断される蛍光タンパク質PhoCLも検討する。融合タンパク質の光制御の効果は精製タンパク質を用いて確認後、神経細胞に導入し、LLPSを操作した際のシナプス微小構造やシナプス伝達効率への影響を検討する。
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