2022 Fiscal Year Annual Research Report
視覚野の神経回路・機能発達における発生期細胞系譜依存性と生後の視覚経験依存性
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21H02600
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
吉村 由美子 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 教授 (10291907)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大脳皮質視覚野 / 興奮性シナプス結合 / 興奮性ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大脳皮質の中でも、感覚入力を操作しやすく、シナプス可塑性や感覚反応の経験依存的発達に関する知見が蓄積されている一次視覚野をモデルに、発生期の細胞系譜と生後の感覚経験のそれぞれに依存したメカニズムが神経回路構築と機能発達にどのように働くかを明らかにすることを目的とする。昨年度までに、興奮性ニューロン特異的なプロモータ制御下で赤色蛍光蛋白(RFP)を発現するiPS細胞を用いて、大脳皮質興奮性ニューロンの細胞系譜を効率よく可視化できるキメラマウスを作成した。本年度は、このキメラマウスから大脳皮質一次視覚野を含む脳スライス標本を作製し、ホールセルパッチクランプ法を用いてシナプス結合の機能解析を行った。蛍光顕微鏡観察により、スライス標本上のRFP陽性ニューロンを同定した後、微分干渉顕微鏡像に切り替えて、RFP陽性の興奮性ニューロンペア(クローン細胞ペア)あるいはRFP陽性と陰性の興奮性ニューロンペア(非クローン細胞ペア)から同時にホールセルパッチクランプ記録を行った。記録した細胞ペアの興奮性神経結合の有無を、片方の興奮性ニューロンに脱分極通電して活動電位を発生させると、相手の興奮性ニューロンに興奮性シナプス後電流(EPSC)が生じるかにより調べた。2/3層内に分布する興奮性ニューロンを中心に解析したところ、クローン細胞ペアは非クローン細胞ペアに比べて興奮性シナプスを形成する確率が高い結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大脳皮質興奮性ニューロンの細胞系譜を効率よく蛍光標識し、ホールセル記録法によるシナプス結合解析を実施した。細胞系譜依存的な結合特異性を示す結果が得られたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
大脳皮質視覚野の興奮性ニューロンにみられる細胞系譜特異的な興奮性神経回路解析をさらに進めるとともに、その形成に生後の感覚体験が必要かどうかを明らかにする実験を進める。
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