2021 Fiscal Year Annual Research Report
カルボカチオンの制御に関する方法論の確立と求核置換反応への展開
Project/Area Number |
21H02603
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
国嶋 崇隆 金沢大学, 薬学系, 教授 (10214975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 光 金沢大学, 薬学系, 助教 (40782850)
松本 拓也 金沢大学, 薬学系, 助教 (40800214)
三代 憲司 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (60776079)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カルボカチオン / 求核置換反応 / 官能基変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルボカチオンは、その高い活性故に不活性化合物の化学変換という観点から極めて魅力的であるが、6電子状態に由来する不安定さが同時にその発生と反応の制御を困難にしており、有機化学の長い歴史の中で未だ広く実用化に至らない最大の原因となっている。そこで本課題では、カチオン種の発生、分解、反応を高度に制御し、従来の一分子求核置換反応では困難であった求核剤の利用や反応条件の適用を始めとする新たな利用法の開拓を目指す。具体的には、可逆的で弱い結合を形成する化合物(カルボカチオン捕捉剤)や最適な脱離能を有する官能基を利用して、カルボカチオン種を擬似的/実質的な8電子状態(捕捉体や等価体等)として安定化させるための方法論を開発し、さらにその応用研究を推進する。 本年度は、以下(1)~(3)の三系統のカルボカチオン種についてその発生法、捕捉法/安定化法、並びに反応について検討を行った。 (1) アルキルカチオン種:いわゆる一分子求核置換反応の活性種であり本課題の重要テーマとして位置づけられる。カルボカチオン種に対する捕捉能は脱離能と密接に関連している。そこで、申請者らがこれまでに実施してきた高活性アルキル化剤の開発研究を通して得られた脱離基に関する知見に基づいて、対象とするカルボカチオンに最適な捕捉剤として、含窒素複素環並びに関連化合物を中心に探索・開発を行うとともに、新規反応や反応剤への開発へと展開した。 (2) アルケニルカチオン種:安定なアルケニルカチオン等価体として知られているビニルヨーダンについて、新たな官能基を導入した多機能性の化合物を設計し、その合成や反応解明について検討を行った。 (3) アリールカチオン種:低反応性アミン類の官能基変換を目的としてアリールカチオン種の発生と反応について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要の項で述べた三系統のカルボカチオン種について以下の研究を行った。 (1) トリアジン及びその互変異性体における脱離能解明研究の中で、複素環の骨格と電子的効果の調節により安定性と脱離活性を制御できることを見出した。この知見に基づいて、新たに設計合成した捕捉剤を用いてベンジルカチオンの安定化と続く反応への利用に成功し、その成果を学会発表した。また、その応用展開として脱離性の低いアミノ基の脱離基への変換を鍵とするアルキル化反応、不活性なアミド基のアルキル化法、及び活性脱離基を応用した新規な脱水縮合剤の開発を行い、それぞれ学術論文や国際及び国内学会等で発表した。また、次年度に予定している不斉誘起反応の準備段階としてプロキラルな第2級カルボカチオンの安定化についても成功した。 (2) アルケニルカチオン等価体として期待されるビニルヨーダンの中でも最小単位のエテニル骨格にケイ素や酸素官能基を有する多官能性化合物の合成と反応性の解明を行い、その成果を学術論文及び国際学会で発表した。この化合物はカチオンだけでなくその他の機能を有する新たなC2ユニット導入剤としての応用展開が期待でき、引き続き研究を推進中である。 (3) 立体的及び電子的影響により極めて低反応性(低塩基性)のアリールアミンに対するアリール化やアルキル化を検討したが、期待する反応は進行しないことが明らかとなった。しかしこの研究を通して得られた知見に基づく応用展開として、カチオンの代わりにラジカルを用いる条件を見出し、低収率ながら目的の反応に成功した。この成果については次年度に学会及び論文発表する予定である。 以上のとおり、当初の研究目的に沿った成果が得られたほか、うまく行かないものについても新たなテーマへの派生的展開に成功していることから、総合的に判断して順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は順調に進展しているため、当初の計画については大きな変更をすることなく、今後も予定通りに推進する。今年度の研究をとおして捕捉剤としての有効性が明らかとなった含窒素複素環並びに関連化合物に関しては、これらを用いて捕捉や安定化した種々のカルボカチオンについて、従来のカルボカチオン種の発生/反応法では実現困難な官能基変換反応を多面的に検討する。また、今年度安定化に成功した第2級カチオン種については、プロキラル面におけるジアステレオ選択的およびエナンチオ選択的アルキル化反応の実現を目指す。一方、アルケニルカチオン等価体については、今年度報告したビニルヨーダンのC2ユニット導入剤としての活用の他、更なる官能基導入を検討して新しいカチオン等価体への展開と反応性の解明を進める。また、新たに派生したアリールアミンのアリール化反応についても引き続き検討する。
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Research Products
(9 results)